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「人の自己紹介はちゃんと聞くのがマナーよ?」
殺人犯に協力する人間の言葉とは思えない。しかし、自ら望んで殺されようとする麻弥もある意味では協力しているようなものだ。
「まあ、いいわ。どうせ直ぐにお別れになるのだから」
明里はため息まじりに言うと手袋を嵌めた。薄手の手袋を嵌めた手のひらを上にして手を伸ばす。
「スマホ、出して?」
これから禁忌を行う。これくらいの警戒は当然だ。麻弥がスマホを明里の手に乗せると、明里は投球フォームを取った。スマホが宙を舞う。そして、ポチャンと池に沈んだ。そのあとは鞄をまるごと池に捨てる。最後にボディチェックをして麻弥が不審な物を持っていないか確認した。
「慎重ですね」
「当然でしょ? アナタと違って私には未来があるの。世間をざわつかせる大きなスクープをものにするんだから」
明里は麻弥を無人の駐車場に連れ出した。赤い乗用車が停まっている。車には詳しくない麻弥だが、この乗用車が高級車な外車であることくらいは知っている。
「乗って?」
明里に勧められるままに助手席に座った。国産車とは助手席の位置が反対になっていて、座ると明里が左手側にいる。ハンドルを握りエンジンをかけて出発した。
人のいない公園で落ち合い、麻弥のスマホや荷物も捨てさせた。明里と麻弥の間に接点はない。これで麻弥殺害事件の捜査が行われても警察の手は明里に届かないと思われた。
しかし、明里はミスをおかしていることに気がついていない。こんな目立つ外車できたこと。
公園の駐車場に設置されたレトロ調なライト。そこには複数の監視カメラが設置されていて駐車場の様子と出入りする車を撮影している。麻弥が視た未来でもこの映像が決めてとなり逮捕されていた。
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