9月8日(下澤裕貴)

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9月8日(下澤裕貴)

 天川麻弥に撒かれた裕貴は街を駆けずり回っていた。風が吹いているとはいえ気温も日差しも真夏のそれと大差がない。汗だくだ。  しばらく走ったあと自販機でスポーツドリンクを買い休憩する。   「ヤッパリ見つけるのは無理か……」  炎天下の中、走りまわったがあくまで、“見つかればラッキー”くらいにしか思っていない。  走っているルートもそうだ。無作為に走って来たわけじゃなく、大和田定信の家に向かうルートを選択している。  “おそらく沙弥の電話の意図もそこにある。沙弥が麻弥の命を諦めるはずがない”  それは裕貴の願望でしかなく、こうして走っているのも“沙弥の本心なんじゃないか”っという疑念を忘れたいからかもしれない。  だから信じるしかなかった。裕貴に諦めるように言った理由を考え、だしたその答えを……。  
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