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大和田の車はその後も竜宮城への道を走り続け、思ったとおり竜宮城で動かなくなった。
「すみません、このまま竜宮城へ向かってもらえますか」
「竜宮城? もう閉店時間を過ぎてますよ?」
「おねがいします」
運転手が不審に思っているのは察することができた。ただ説明のしようもないので気づかないフリをする。
ナビの必要が無くなり、無言のままタクシーは走り続けるが、大和田の車が停まったことは麻弥と接触しているということ。
何か起こる前触れを見ているのに、何も出来ないのが歯がゆい。
早く着いてくれることと、麻弥が無事でいてくれることを祈り続けるが、不穏な影が背後から近づいてくる。
その正体は見て確認するまでもない。大音量のサイレンを鳴らし赤いランプで周囲に自らの存在を示し、猛スピードで追い越していく。
「ありゃー……何かあったんかなぁー?」
運転手は呑気な声で言う。話しかけてきているのか、ただの独り言か分からないが、追い越していった救急車の後ろ姿を追いかけた。
大和田の車が竜宮城に到着してから随分と時間が経過してしまったが裕貴も到着した。この時間、閉店した竜宮城は駐車場を含め寝静まっているはずなのに赤い光で燦燦と輝いている。どこかのクラブに迷い込んだのかと勘違いしそうなくらい、何台も停まったパトカーのサイレンはド派手に、明るく光っていた。
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