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もとよりメッセージを送信するつもりはなかったので冗談というのは直ぐに伝わった。
麻弥の浮かれ気分は収まったが、荒療治が過ぎたのかムスッとしている。その横に座ると麻弥の肩を支えにするとリラックスした。
「麻弥はホント下澤くんのこと好きだよねー」
「むぅー。好きって言った覚えないけど?」
「そうだったね。言ってはいないね」
沙弥は姉の温もりをヒシヒシと感じ取った。半年後にはこの優しい温度が失われてしまっていた。懐かしさが胸のうちを満たしていく。
「どうしたの? 今日は甘えるじゃない?」
麻弥はそっぽを向いたまま、ぶっきらぼうに聞いた。裕貴と一緒に過去に戻ってきたことを、麻弥は知らない。だから、麻弥からしてみれば甘えん坊に見えてしまっているのだろう。
「んーー。もうすぐ麻弥も結婚しちゃうんだなーって思ったら寂しくなったの」
「結婚って……。女は16歳で出来るけど男の人は18歳にならないと出来ないから」
呆れた物言いだ。結婚はまだ先の事と思っているのか、それとも自らの死を予知していて縁がないと思っているのか……。或いは、ただ単に常識がないと思っているのか。
何にせよ、本当に面白い姉だ。
「18ねぇー……。誰のことを言ってるのやら」
麻弥の言い方だと、現時点で結婚出来ない歳の相手を想像しているようだ。そのことを沙弥に指摘された麻弥は言葉を詰まらせた。
「まっ! 誰を想像してるか予想はつくけどね」
「もぉ……沙弥のバカ……」
怒った麻弥が立ち上がると、寄りかかっていた沙弥はソファに倒れた。横向きになった姉の背中を見つめた。
「麻弥! 未来予知で見れる未来って変えられないの?」
「なに? 今更? 未来予知で視る未来は沢山の未来があって、可能性の高いものから順に視えているの」
そのあとに「その全てを視ると疲れるし、時間もかかるから途中で止めるけど」っと付け加えた。
沙弥は上体を起こし姉の袖を握る。麻弥は沙弥の不安を察したのか沙弥の手に手を優しく重ねた。
「沢山の未来があるのは私の行動が未確定だから。私がどんな行動をして結果どんな影響を周囲に与えるか。だから変えたい未来が私の関わることができる範囲内でなら変えられる」
「じゃあ麻弥が視た未来以外の未来はないの?」
「あるよ。未来は過去と今の積み重ねた先にあるのものだから。沙弥が魔法を使って過去を変えれば。もっともそれが沙弥が望む未来に繋がるかは分からないけどね」
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