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沙弥は持ち上げた頭をもう一度下げて項垂れた。
「…………」
「…………」
「……ねぇ! シカトしないでぇ!」
さっきのハツラツとした声とは裏腹に今度の佳子の声からは悲しい気持ちが感じられた。
沙弥は仕方がないっといった様子で頬杖をつき、佳子ののほほんとした顔を見た。
「だって佳子って悩みないでしょ?」
「そんなことないよぉ。毎日毎日悩みばかりだよ」
佳子とは高校に入学して知り合ったばかりだ。でも麻弥の死を回避するべく何度も過去に戻っているので長い付き合いのような気もする。
「そんな訳だから何でもこの佳子様に相談してみなよぉ?」
「えー……じゃあ聞くけど、佳子は好きな男子いる?」
佳子と友人になったのは今回で何回目だったか……。何回も友人をやり直しているが、菩薩のように悟りを開いた顔になったのは今回が始めてだ。
「好きな男子? ……ミルフィーユで良いかな?」
「ヤッパリ佳子に相談しても無駄だったね」
思い返せば佳子と恋バナはしたことがなかった。する理由もなかったし、佳子には無縁の話しだと思っていたからだ。
「少しはスイーツ以外に興味を持ちなよ?」
「まったまった! 今のは冗談だから!」
佳子は食い下がるが望みは薄そうだ。
「好きな男子はいないけど、恋バナなら任せてよ! なんせ私はスイーツ大好きーー『スイーツ女子』だからね!」
「それ、まるで意味違う。恥ずかしいから他所では言わないでね」
沙弥の勘はバッチリ当たっていた。佳子に相談事をしても無駄。特に恋愛に関しては小学生の方がまだマシなアドバイスをしてくれそうだ。
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