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 裕貴は中学校の卒業アルバムを閉じて机の上に置いた。隣には今朝大急ぎで買ってきた新聞がくしゃくしゃになって放置されていた。  高校生になって半年。今になって中学校の卒業アルバムを持ち出し、天川麻弥との思い出を呼び起こしたのは昨日の夕方のニュースを見たからだ。  ブルーシートと“keep out”の黄色テープ。その前には制服警官が立ち一般人の侵入を拒んでいた。 『速報です。行方不明になっていた天川麻弥さんの遺体がつい先ほど発見されました。遺体には鋭い刃物による傷があり、警察は殺人事件として捜査を開始しました』  聞き覚えのある名前に裕貴は画面に食いついた。きっと同姓同名の人物だ……そう思った。そうであって欲しかった。けど無情にも被害者の写真は紛れもなく裕貴の知る天川麻弥だった。 ーーもう天川麻弥はいない。もう会えない。声を聞くことも。  その事実が裕貴の視界を昏く重い色で塗りつぶしていった。  裕貴の絶望感などお構いなしにテレビの報道は続く。 『なお、天川麻弥さんは小海高校に通っており今月10日学校からの帰宅途中に行方不明となっておりました』  ニュースを読み上げたのは水端明里というレポーター。後ろで結んだ髪はボサボサでジャケットもシワシワ。急いで駆けつけたという感じだ。  これが彼女たちの仕事なのだと理解している。事件、事故を速やかに伝える重要性も……。  でも、今は……今だけは彼女たちマスコミが憎い。人の死を、不幸を食い物にして金をもらってるけとが、無性に腹立たしく感じた。  
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