4月17日(下澤裕貴)

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 浩一に呼び出された裕貴は電車に乗った。学校へ行くときは山の方へ向かうので反対方向は新鮮だ。電車から見える景色も街から次第に海へ変わっていく。  海の雄大さに感動を受けていると、浩一の待つ駅に着いた。 「待ってたぜ、裕貴! 早く行くぞ」 「待てって! どこに行くんだよ?」 「この先! 『竜宮城』!」  竜宮城はこの夏にオープンする巨大な複合商業施設だ。  裕貴は早足で歩く浩一を追いかけた。浩一が迷うことなく真っ直ぐ進むのでタイミングを逃したが、浩一の行動はおかしい。まだ4月だ。 「竜宮城? まだオープン前じゃないのか?」 「いーからいーから!」  竜宮城に向かう道中、歴史のある文陽高校とは違い、出来立てホヤホヤの校舎が見えた。外観だけでなく、設備も近代的なものだろう。オンボロエアコンしかない文陽高校の生徒からすれば羨ましい限りだ。  竜宮城に着いたとき、目を疑った。 「なんだ……? なんでオープン前なのにこんなにも人が集まってるんだ?」 「驚いただろ! オレも情報通の知り合いに“今日、プレオープン”って聞いたんだ。まあ、映画館とかボーリングとか遊技場の方はしまってるみたいだけどな」    その代わり専門店や飲食店は全て、通常通りの営業を行っているようだ。浩一はどこから手に入れたのか知らないが招待券を2枚取り出した。プレオープンとはいえ人が多いのは龍宮城に参加した店舗が多く、各店の関係者に複数枚の招待券を出しているからだろう。  蟻の軍隊のように行き来する人間の手には色んな店の袋が握られていた。服やアクセサリー、時計に靴、それに食品や薬品など有名な店の袋が多いように思える。 「それで、浩一の目当ては?」  プレオープンとは珍しいがわざわざ呼び出すことのように思えない。 「アレだ! 『竜宮城タコ焼き』。“浦島味”にヤングver.とオールドver.があるんだよ」  浩一の示した場所は、椅子とテーブルのある屋外の休憩スペースでタコ焼き屋の露店が出ていた。浩一のタコ焼き好きはよく知っているから付き合うのも吝かではない。 「アレに並ぶのか?」 「頼んだぜ」  ただそれでも億劫になるほどの行列ができていた。    裕貴と浩一は最後尾に並んだ。ざっと2、30人くらいはいそうだ。どうやら注文を受けたその場で焼き始めるため余計時間がかかっているらしい。その分、焼き立ての香ばしい香りが広がり、誘惑された人間がふらり、ふらりと行列に加わっていく。  
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