11人が本棚に入れています
本棚に追加
着替えを済ませ寝癖を直した沙弥は家をでた。今日は佳子との約束の日。麻弥たちの背中を押すために恋愛について学ぶ日だ。
待ちあわせはファミレス。ここへ佳子が恋愛に詳しい人を連れてくることになっている。
“恋愛について学べば麻弥たちの手助けができる”
そう思っていた。だが、その目論見は積み木の家が崩れるようにアッサリと崩れ去った。考えが甘かったのだ。沙弥の友人の佳子がどういう人間なのか、そこをしっかり考慮すべきだった。
「おまたせー、沙弥!」
合流した佳子の隣にいるのはどう見ても小学生くらいの男の子。沙弥は頭を抱えてしまう。
「一応、聞くけど……その子は?」
「私の弟、佳吾。すっごくモテるから色々聞いてみると良いよ」
沙弥の正面に栗林兄弟が座る。ツンツンアタマの小学生はウェイトレスさんに「俺、コーラ!」と元気よく注文した。それに続いて佳子が「私はボルシチと抹茶アイスとドリンクバー」と頼んだ。
「えっと佳吾くんは今、何年生?」
「俺? 今5年生だぜ」
“ああ、これはダメだ”っという考えが頭の中を回転する。麻弥と裕貴は仮にも高校生。小学生の恋愛事情が通用するとは思えない。
「んで姉ちゃんがモテたいって人?」
「そうだけど?」
「まっかせてよ! 俺、今年のバレンタインにチョコを3つももらったんだから!」
佳吾は胸を張ると自慢話を始めた。女の子と一緒に帰ったことや手を繋いだこと、それに去年の夏祭りで一緒に花火を見たそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!