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GW前夜(下澤裕貴)
キャンプの準備は簡単だ。テントや飯盒は学校が用意する。個人で用意するのは着替えだけ。その着替えも学校指定のジャージだから悩む必要が無い。他に持って行くとするなら虫除けスプレーと絆創膏くらいか……。
「っと、スマホ充電しとかなきゃないけないな」
モバイルバッテリーを持っていれば必要ないかもしれないが、裕貴は持っていない。過去に戻って来る前にこの行事に参加した時も途中で充電切れを起こして使用不能になってしまった。過去の失敗は繰り返さない。
翌日の準備を万全にしたところで風呂へ向かった。明日のキャンプは大変だ。学校からキャンプ道具を持って登山をすることになる。そのハードさは1度体験済み。明日へ備えぬる目の湯に長時間浸かり、早めの就寝で体力を完全回復させることにした。
風呂から戻ってくるとスマホが点滅していた。メッセージが届いたことを裕貴に知らせてる。実に仕事に実直な子だ。
「あっ! 麻弥さんからだ」
日課の「おやすみ」メッセージかと思いきや少しだけ文章の量が増えている。
ーー下澤くん、沙弥から明日キャンプに行くと聞きました。余計なお世話かもしれないけど、合羽を持って行くと良いかなって思います。おやすみなさいーー
麻弥からのメッセージ。ちょっとした挨拶以外の内容が届いたのはこれが始めてだ。
「よっし!」
堪らずガッツポーズが出た。せっかく風呂でリラックスしてきたのに心の中がザワメキ出してきた。
「合羽……合羽……持ってたっけなぁ?」
天気予報は晴れだし前の時も雨が降ることは無かった。降るとは思えないが未来予知できる麻弥が忠告してくれたということは、合羽が必要になるということだろう。
家の中を漁ってみたが合羽は持っていないようだ。そもそも日常生活では傘の方が雨具としてメジャーで、合羽を着る機会なんて滅多に無い。
「仕方ない。まだ店開いてるし、買うか」
今から向かうと閉店前には入れる。
「っと、その前に返信しておかないと。それと沙弥さんにも」
裕貴に麻弥と交際するように頼んだ責任からか、沙弥はよく気にかけてくれている。麻弥が一歩踏み出してくれたことを報告しなくては。
2人へのメッセージを打ち終わると財布をポケットへ入れる。それと自転車の鍵も持った。月明かりが冷たく照らすなか、裕貴は自転車を漕ぎ出した。
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