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5月1日(下澤裕貴)
エメラルドグリーンの葉っぱの隙間から太陽の光が溢れて輝いている。大樹の枝のトンネルを抜けるとキャンプ場の駐車場に着いた。先導していた教員の田沼が駐車場の中央で止まると次々に生徒が座り込んで行く。文化系や帰宅部の生徒は死屍累々、運動部の生徒ですら体力が枯渇し激しく息を切らしている状態だ。
裕貴は荷物を置くと両手を太陽へ伸ばした。キャンプに必要なものを手分けして運んできたが、裕貴の担当は白米。いくつかの袋に小分けしたうちの1つだが重い。とにかく重い。人生で2度も重い米を持って登山するとは思わなかった。
学校を出発した時は昇り始めたばかりだった太陽も、今はもう頂点に到達している。
「よーし! みんなよく頑張った!」
引率の教師である田沼が振り返って生徒たちを労った。毎年の恒例行事となっているキャンプ。その度に田沼は引率しており、まだまだ体力には余裕がありそうだ。
「じゃあ皆お待ちかねの昼メシの時間だ。作るぞカレーライス!!」
田沼の呼びかけに「おー!」と数人の生徒が応える。残りの生徒からは「えー」っという不満の声。少しは休ませろという合図だ。
「今からカレーなんか作れるか」
裕貴の隣でくたばっていた浩一から怒りの感情が溢れた。カレーを楽しみにしている田沼には悪いが裕貴も浩一に共感する。
「こんなバテバテで飯盒炊飯って。せめて昼くらいは出来たものを食べさせて欲しい」
裕貴も愚痴が溢れる。飯盒炊飯が大変なのは前回の時に思い知らされた。火のつかない薪に、芯の残った米。シャバシャバになったルウはもう、カレーとは呼べない代物だった。
「ホラホラホラ!いつまでもグダグダ言ってると昼飯と晩飯が一緒になるぞ」
田沼が生徒の不満を両断する。裕貴と浩一を始め、疲労困憊だった生徒たちは最後の力を膝に注ぎこんでキャンプ場の中に消えていく。
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