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「ふーん。でも雨でしょ? レインコート買ってたし。そんな心配しなくても良いでしょ?」
「そう……。ヤッパリ合羽じゃないんだ。レインコートにしたんだ」
「? どっちでも同じじゃない?」
沙弥は不思議そうに麻弥の顔を覗いた。合羽とレインコートの違いなどズボンがあるか無いかくらいの差でしかないと思っていた。なのに、なぜ麻弥はここまで深刻そうな顔になっているのだろう。
「どうしちゃったの? そんな顔をして? 少しくらい濡れてもせいぜい、風邪をひくくらいでしょ」
「そう、だね。それくらいで済めば良かったけど……。まだ、未来は確定していないから」
沙弥は倒れてきた麻弥に自分の身体を貸した。胸の中の麻弥は密着してどうにか分かるくらいの小ささで震えている。もしかしたら、麻弥の綺麗な瞳の奥には残酷な未来予知の結果が貼り付いているのかもしれない。
「麻弥がどんな未来を見たか分からないけど、大丈夫。望まない未来になったら私の過去干渉でやり直すから」
沙弥が頭を撫でると麻弥は目を瞑った。強張っていた身体は柔らかくなり震えも止まっている。安心してくれたみたいだ。
「未来を予知する麻弥、過去を変える沙弥。私たち姉妹が揃っていれば未来を怖がる必要なんてないんだから」
「うん」
沙弥はそっと麻弥の肩に腕を回した。
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