5月1日夜(下澤裕貴)

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 冷たい雨は徐々に強くなっていく。生徒は肉を抱えてテントへ避難を始めた。瞬く間に夜空の下で肉を食べる人はいなくなり、雑多な話し声はなりを潜めてしまう。 「天気予報は晴れだったのになぁ」  裕貴がテントの外を見ると雨は本降りになっていた。こうなる予感は麻弥からメッセージをもらった時点で芽生えていたが、天気予報を上回る予知をしてしまうとは驚きである。 「傘持ってきた人、挙手!」  浩一が聞くと坂本と竹林は首を横に振った。浩一も持っていない様子。 「裕貴は?」 「傘は持ってないけど、レインコートなら」 「でかした!」 「準備いいな!」 「流石オレたちの裕貴!」   浩一たちが声を揃えて褒めた。みんなが褒めてくれるのは嬉しく、麻弥に感謝しなくては。  そう思っていた裕貴の前に空っぽになった紙皿が差し出される。 「おかわり取ってきてくれ!」 「傘じゃないから肉は濡れるぞ?」 「そんなのビニール掛ければ良いだろ?」  坂本からビニールが手渡された。それを受け取るとレインコートを羽織って外へ出る。炊飯棟は炭火でオレンジ色に染まり傘をさした生徒が集まっていた。
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