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浩一たちの肉への欲求は底が知れなかった。雨の中を往復した回数は片手では数えられない。
「うへぇー、びしょ濡れ」
レインコートにズボンはついておらず何度も雨の中を歩けば足元が濡れるのは必然だ。
「ご苦労だったな」
「なんでそんな偉そうなんだ?」
そう言った竹林はシェラフの上で大の字になって寝ている。その腹は暴食した肉で膨らんでいて話す度にぷるんぷるんと揺れた。
「まあいいや。それより先生が危ないからテントの外にはでるなだってさ」
裕貴は濡れたズボンを履き替えながら先生からの言伝てを伝えた。
「出ようにもこの雨だしなあー」
浩一が見上げた先には吊るされたランプがある。LEDの強烈な光が照らし雨がテントを打ち付けているのがよくわかる。
「そういや雨、強くなったよな」
そう言いながら坂本はシェラフの上に仰向けで倒れた。残念そうに見えるのは、夜はまだ始まったばかりだというのに外にも出られず狭いテントに閉じ込められたからだ。
「もう寝るか……?」
裕貴は一応聞いてみた。小学生だって寝ていない時間に高校生が寝られる訳がない。予想通り「まだ早いだろ」っと笑い飛ばされた。
「つっても、充電できねーから動画を見るわけにもいかんしなぁ」
竹林はスマホを見ながら言った。電波は入っているのでアニメや映画を観たりできる。しかし、充電の術はない。
「っとなれば、恋バナだろ!」
竹林は飛び起きた。男女問わず盛り上がることができる切り札。それが今切られた。
外は大雨。テントは狭く、夜はまだ浅い。逃げ場は……ない。
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