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竹林の目はハンターの目だ。その目が標的を選ぶ。
「そうだな。まず、誰に好きな人を白状してもらおうかな」
裕貴、浩一、坂本と順番に品定めが始まる。だが、竹林が標的を決める前に先制攻撃を放つ者がいた……浩一だ。
「最初は言い出しッペのお前が白状しろよ、竹林?」
その返しは竹林の妄想に誰かを出現させたようだ。真っ赤に顔を染めてニヤケだした。
「どうしよっかなぁ。恋の成就に協力してくれるなら教えてやってもいいけど?」
「キモイ! うるさい! 早く言え!」
坂本が勿体ぶる竹林を一刀両断する。
「分かったよ! 誰にも言うなよ? 冬野先輩だ。冬野先輩が好きなんだよ」
LEDのランプが照れ竹林に冷たく浮かび上がらせる。坂本も浩一もランプと同じく冷たい視線を竹林に向けた。
「やめとけ。絶対にムリだ」
「暇だから今のうちに失恋パーティしとくか?」
浩一も坂本も名前を聞いただけで、竹林の恋は叶わないと決めつけた。これは2人とも冬野という人物を知っているから出てくる反応。
「お前ら酷くないか! 裕貴お前はこの恋を応援してくれるよなっ!」
同意を求められても裕貴に冬野という人物と面識はないし、名前の心当たりもない。
「冬野先輩ってだれ?」
そう聞くしかなかった。
「イヤイヤ。何で知らないんだよ? 冬野先輩だぞ? テニス部エースで我が校の絶対的アイドル冬野瞳だぞ」
鼻息荒く竹林が答える。竹林の圧に圧されながらも裕貴は竹林がテニス部であることを思い出した。どうやら入部の動機は不純なものらしい。
「ははは、それはそれは……。うまくいくと良いな」
「中途半端に応援しても失恋を長引かせるだけだぞ裕貴」
浩一が肩を叩いて裕貴を止める。浩一も坂本も悲しいほど憐れみ深い眼で竹林を見てしまった。
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