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「そ、そういうお前らはどーなんだよ? 坂本!」
次に指名が入ったのは坂本。さっきの竹林とまるで違い同様した様子はない。
「いない!」
つまらない答えだと竹林は呆れた。
「高校生だし、好きな人くらいいるだろ」
「高校生だからいないんだ! 俺はもっとグラマーな女が良いんだ! でっかい乳に挟まれてーー」
欲望を包み隠くさず吐露するその姿勢に全員が軽蔑の眼差しを送る。
「コイツ、サイテーだな……」
「男としも人間としも、な」
「本当にな」
竹林の恋バナで温まっていた空気もたちまち凍りついてしまった。これ以上坂本に話しをさせても軽蔑度合が増すだけ。冷たい空気を変えるために竹林が裕貴をみた。
「じゃ裕貴の恋バナを聞こうか?」
“好きな人”
この話題になって頻繁に使われる言葉。この単語を聞くたびにある人物が脳裏に浮かぶ。
ーー天川麻弥
でもこれは恋心なのだろうか? 沙弥から頼まれたから、麻弥のことを思い浮かべただけではないのか?
「いない、な」
思い浮かぶがこれが恋なのか分からない。そもそも恋心とはどんな気持ちを指すのか裕貴には分からない。
考えが堂々巡りだ。答えなんて出てこない。
「ウソつけー!」
浩一が裕貴の肩を揺さぶる。
「本当にいないってば!」
「ホラあの子!」
「あの子?」
「タコ焼き屋でバイトしていた子だ!」
そういえば浩一は1度麻弥と会っている。浩一と竜宮城でタコ焼きを買ったとき、麻弥が売り子をしていた。そのときはちゃんと紹介せずに終わったが何故か浩一は覚えていたーー……。
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