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「それって誰のことだ?」
竹林が食いついてきた。竹林にとってこれは池に落ちた虫。僥倖だ。この班のなかでこの話題に1番無縁だと思っていたのが裕貴だ。
学校のマドンナを知らなかったように、クラスの女子と進んで話さないように…………。まるで想像がつかないでいた。そこにふってわいてきた情報。
「なぁ浩一! 裕貴が好きな人ってどんな人?」
「好きな人じゃないって! 中学の同級生ってだけだ!」
否定するものの竹林はまるで信じていなさそうだ。浩一に食いつく。
「裕貴と一緒にタコ焼きを買いに行ったときバイトしてたんだよ。すんげぇ可愛い子。その子を見る裕貴がめっちゃ嬉しそうなんだよ!」
「マジか! 完全に恋じゃん!」
「可愛いってどれくらい?」
「ぶっちゃけ冬野先輩にも負けてない。オマケに双子で妹もむっちゃ可愛いのな」
裕貴をそっちのけで3人が盛り上がる。もう裕貴が何を言っても止まりそうにない。もう勝手にしてくれと諦めた。
『その子を見る裕貴がめっちゃ嬉しそうなんだよ!』
会話を止めることを諦めた裕貴だが浩一の一言が耳に残っていた。
「確かにそうかもな」
麻弥と会ったときの気持ちは体に刻み込まれていて、いつでも思い起こすことができる。麻弥に会えるだけで裕貴は身が震えるほどに嬉しいようだ。
裕貴の呟きは麻弥の容姿を芸能人で例える浩一の声に消されていた。
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