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麻弥の容姿がそれぞれの妄想のなかで勝手に膨らんだ。竹林と坂本はどんな想像に至ったのだろうか?
「じゃ、最後! 浩一に好きな人を暴露して頂きましょう!」
竹林が低クオリティのバラエティ番組の司会者みたいなノリで言った。浩一は腕を組んで考え込む。
「好きな人。考えたけどいねーわ」
「なんだよ! みんなして! まともに恋をしてるの俺と裕貴だけじゃん! 楽しめよ青春をさっ!」
大きな声で竹林の説教がとんできた。裕貴は「僕もカウントされているんだ」と思ったが、言っても無駄だろうと口を噤む。その代わり浩一へ質問をぶつけた。
「好みのタイプとかは?」
「好みか……姉貴みたいなのかな」
恥ずかしさから浩一は早口になって話した。過去に戻って来る前から仲良くしていたがこんな表情は始めて見る。
それに浩一に姉がいたのも始めて聞いた。
「浩一の姉ってどんな?」
「そうだな……明里姉とは7歳離れててとにかく頭が良い。テスト前はいつも勉強を教えてもらってる」
入学してからテストはまだ行われていないので浩一の成績が良いのか悪いのか分からない。けど自信あり気な顔をしている。
「あと目的のために入念準備して成し遂げる計画性とか」
7歳とはかなり離れている。小学生と中学生くらいの差。近所の姉に憧れを抱く男の子は多いが、浩一も同じ感覚なのかも知れない。
いや、もしかしたら本当に浩一は姉のことを好きなのかも…………。
いや、流石に本人には確かめられない。
「それに姉貴はオレと同じ夢を持っていて……」
裕貴は浩一が照れた様子で話しているのを聞いていると五月蝿い雨音に足音が混ざっていることに気がついた。
「オイ!! 竹林! 下澤! 坂本! 水端! 起きているか!」
浩一の話しはライオンの雄叫びのように猛々しく轟いた声が吹き飛ばしてしまった。浩一が「起きてます」と返事をするより早く田沼がテントの入口を開けた。
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