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列に並んでから麻弥と中学の思い出で盛り上がった。英語授業中にリスニングの勉強で洋画をみたこと。理科の先生のオネェ疑惑。体育祭の騎馬戦で起きた場外戦。
話しが弾んだところで裕貴たちの順番が回ってきた。裕貴はメニューから
ブルーベリー味を選択する。
「麻弥さんは?」
「えっと……私はストロベリー。沙弥には……えっとーーお好み焼きソース味」
「いいの? それで!」
そんな味があることにも驚きだが、そんな未知の味を注文し妹に食べさせようとしてることにも驚きだ。
「いいの! 沙弥はこれで。お仕置き!」
「お仕置き? と、いうか怒ってる?」
裕貴が聞くと笑顔を崩すことなく「怒っていないよ」と答えた。怒っていないと否定する麻弥だが、その笑顔の裏にはチラチラと怒りが覗いている。
何故だ……?
理由は分からないが、沙弥に対してお仕置きと言っていたのも気になる。麻弥の怒りの動向に注意しつつ沙弥が取った席に座る。
「ハイ、これ沙弥の分」
麻弥は笑顔のままお好み焼きソース味のパフェを沙弥に差し出した。
「えっ………なにコレ? すごいニオイ」
パフェにお好み焼きソースがかけられていれば顔を顰めたくなる気持ちも理解できる。
「これ……ちょっと麻弥! 私もストロベリーとかチョコとか普通のが良かった! もう怒るよ」
沙弥は雪山のように白いパフェを黒く汚すお好み焼きソースを睨んだ。あまり美味しそうに見えないパフェを前に沙弥は唇を尖らせているが、笑顔の麻弥の方がよっぽど怒っているように見える。
「怒りたいのはコッチ! 全然約束と違うじゃない!」
「いいじゃん! 麻弥だって喜んでたくせに! ムッツリスケベ」
「誰がよ! もう……」
麻弥と沙弥が舌戦を繰り広げた。ケンカの理由はイマイチ不明だが、裕貴はこの場を収める方法を探し考えを巡らせた。
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