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ケンカの仲裁方法を考えてた裕貴は、自分の前にあったブルーベリーのパフェを沙弥に差し出した。
「まあまあ。2人とも。沙弥さん、これと交換しよう」
少なくとも沙弥の怒りの原因は謎のパフェだ。それを取り除けば機嫌は良くなるだろう。
「ありがとう! 下澤くん!」
思った通り沙弥の機嫌は良くなった。ただ、交換した際、沙弥が勝ち誇った顔で麻弥を見たため麻弥の機嫌はより一層悪くなったようだ。
「もぉ下澤くん。沙弥を甘やかさないで」
ケンカを仲裁しただけなのにとばっちりを受けてしまった。都合よく仲直りとはいかない。人生はパフェのように甘くないらしい……。
「下澤くん。姉妹のケンカなんて日常茶飯事。気にしないでいいよ」
麻弥はパフェを口に運ぶ。ただ、チラチラとブルーベリーのパフェに視線を送っている。ブルーベリーが食べたかった……訳じゃないよな? 麻弥は自分でストロベリーを選んだのだから。
「そうそう。このムッツリ姉さんが素直にならないだけだから」
麻弥の羨ましそうな視線に気がついた沙弥。パフェをスプーンで掬うと麻弥の前に差し出した。
「もう……ムッツリじゃないから」
ちょっとだけ戸惑いをみせた麻弥だが、沙弥のスプーンに口をつけた。その行動に満足した沙弥は麻弥の頭を撫でると、そのまま麻弥の背中を抱いてみせる。
「“ありがとう”は?」
「……ありがとうございました!」
悔しいそうな顔を浮かべた麻弥だったが、観念したのか投げやりにお礼を言った。
「ね? 分かったでしょ?」
沙弥が理解を求めた。
「そうみたいだな。姉妹の関係は男が理解するには難しいってのが分かった」
実際、何故アレで仲直りになったのか意味不明だ。やった事と言えばパフェをあげたのと背中を抱いたくらい。仲直りに至る要素は無いように思えたが、テレパシーで会話でもしているのか?
麻弥は沙弥に背中を抱かれたまま裕貴に訴えた。
「り、理解されても困る! 恥ずかしいし……。それより食べよ、パフェ」
「ああ。うん、食べよう」
これ以上は考えてもしかたない。麻弥と沙弥の間でしか通じないことのようだし……。
それにしても……っと裕貴はパフェに目を向ける。改めて見ると中々のインパクトだ。沙弥と麻弥もどんな味なのか興味はあるようで裕貴の行動を観察している。
2つの好奇心の視線に晒されながら食べてみた。アイスや生クリームの甘さとお好み焼きソースの味が絶妙にマッチしている。冷静に考えてみればお店で提供されているのもなのだから、大ハズレはない。
「あっ、コレ意外と美味しい」
2人が無言で感想を求めていたので、裕貴は率直な感想を伝えた。2人は度肝を抜かれた顔をする。きっと「すんげぇ味! マズい!」みたいなリアクションを想像していたのだろう。
「麻弥、食べてみたら?」
商品のインパクトから信じられないといった顔で沙弥は麻弥に勧めた。
「なんで私が?」
「選んだの麻弥でしょ? それに私が食べていいのかな?」
「ダメダメ! それは絶対にダメ!」
まただ……。また不可解な事案が発生した。このパフェは麻弥が沙弥にお仕置きの意味を込めて選んだものなのに今度は食べさせないと真逆の事を言い出した。
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