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家についた沙弥がリビングに行くと麻弥が勉強をしていた。傍らには昼食のチャーハンが並んでいる。
「おかえりー」
気配を感じとったのか麻弥は教科書から目を離すことなく言った。麻弥の背後から麻弥のノートを見ると戦国の武将や事件について、カラフルな蛍光ペンを使い綺麗に纏められている。
「へーー。麻弥も勉強するんだぁ」
「馬鹿にしすぎでしょ。私だって魔法ばかりに頼らないから」
「ふーん。中学のときは『テストは自分の実力をみるもの。魔法も自分の力の一部だから問題ない』って言ってたのにね! どうゆう心境の変化?」
沙弥は麻弥の前の椅子に座る。そうすると麻弥は教科書を閉じてチャーハンを2人の前に置いた。作ってから時間がたっているらしく、湯気がたたないくらい冷めている。麻弥が「温めよっか?」と聞くが、沙弥は断った。
「その恩恵を受けてたのは誰?」
「しょうがないでしょ。私が魔法を使うと『予知が狂う!』って誰かさんが怒るもの」
肩を竦めながらチャーハンを口へ運ぶ。麻弥の料理の味に舌鼓を打つと麻弥の皿をみた。
「味付け、変わった?」
食事は麻弥と当番制。麻弥の手料理の味なら舌に完全に記憶している。ただ、ここ最近麻弥の手料理の味に変化が生まれている。
「べ…………つに! 私の味の好みが変わっただけ!」
沙弥はチャーハンの中から小さい海老を掬って麻弥の横に並べてみた。プリプリの鮮やかな桜色の海老とそっくりな麻弥。「ふーーん」っと沙弥は頷く。この娘はなんて分かりやすいのだろうか。
「へーー! これが下澤くんの好きな味付けかぁ!」
麻弥が大きく口を開いた。どうして分かったのかと聞きたそうな顔だ。
「そかそか。下澤くんの好みの味つけを聞き出したかぁ! いやぁいつの間にか麻弥は男好きになったかぁ」
「ち! 違う! し、下澤くんとはメッセージのやり取りは沢山してるけど、聞いてきたのは下澤くんからで」
面白いくらい自分から言い出してくれる。それはそうと、裕貴も宣言通り頑張ってくれてるようだ。2人が交際をする日も近いかもしれない。
「ハイハイ」
「ホントだってばぁ!」
「信じてるよー。他にはどんな話しをしたの?」
コホンっと咳払いをして麻弥は姿勢を整えた。「べ、別に普通のことバカリだよ」っと前置きをするとどんな会話をしたのかを嬉しそうに話し始める。
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