6月24日(天川沙弥)

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 更衣室の裏は背の高い塀があり、その間にはブナの木が並んでいる。緑色の葉がきらめく下で、巨漢の男が倒れていた。   唇を切り、両方の鼻の穴から血を流している。頬や額にも傷や痣ができていて酷い暴力を受けたようだ。  沙弥は大和田を蹴りとばしていた遠野と菊池を睨む。 「貴方たち、いい加減にしなさい」 「んだあ、お前……?」  遠野が沙弥を睨む。何だか一昔前の不良みたいだ。 「酷いことをするのも大概にしないとしっぺ返しに合うわよ?」    沙弥は指で大和田をさしながら2人を注意する。すると2人は大笑いした。 「おいおい! 俺ら酷いことなんてしてねーぞ?」 「そうだそうだ! 俺らは遊んでただけだぜ? なあ?」  菊池が大和田を蹴る。みぞおちに爪先が刺さり大和田は嘔吐いた。菊池は大和田の髪を鷲掴みにすると面を向かせる。 「なあ? 大和田、お前イジメられてないよなぁ?」  大和田は涙と血で汚れた汚い顔で頷く。 「おい、菊池。コイツ、天川麻弥じゃないか? 同じクラスの」 「ああー! でも何で体操服? 次、体育だっけか?」  沙弥はこの反応をされることをある程度は予想していた。顔で判断してもらえないのはもう諦めているが、麻弥たちのクラスは体育じゃないのだからせめて服装では判断してほしい。 「違う! 私は天川沙弥。貴方たちのクラスメイトの麻弥の双子の妹!」  沙弥は足元の石ころを蹴った。 「双子……双子ねぇ。そりゃ最高じゃねぇか」  遠野が沙弥をみる。髪の毛の先から爪先までを舐め回すように見た。不快な視線に沙弥は顔を歪める。 「ああ。こんな上玉ならな。順番待ちでお預けなんてなんてこともなさそうだし存分に楽しめるだろうな!」  遠野と菊池は既に大和田から興味を失っている。目の前に現れた極上の餌に夢中だ。 「おいおい! 遠野。お前の顔が怖いから泣いちゃってるぞ」 「ちげーよ、バカ! 」    菊池と遠野が沙弥に迫った。2人の淀んだ目には沙弥の泣き顔が映っている。
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