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6月24日(天川麻弥)
帰りのホームルームが始まる。普段は何もないのだが、今日は違う。大和田と遠野と菊池、昼間の件が簡潔に説明された。
3人の席は空席のまま。大和田は保健室で治療してもらったあと、早退したそうだ。遠野と菊池も早退だが、退学か停学か……。処分が決まるまで休みだそうだ。庇ってもらえない辺りおそらく前回のテストの結果は良くなかったのだろう。
「以上だ。お前らもイジメなんて幼稚な真似すんなよ」
流石、小海高校だ。勉強以外にはとことん手抜きだ。教師の気怠げな一言で今回の件は幕引きになった。
教育機関として問題があるようにおもうが麻弥には有り難い限りだ。特に今日に限ってはなおのことーーーー。
「まーやー? 今日、どっか寄って行かない?」
「ごめん。今日予定あるんだぁ」
鞄を肘にかけると両方の手のひらを合わせた。
「なぁにー? 男?」
「違うよ! 今日は私が料理当番ってだけ」
麻弥が愛想よく手を振って誤魔化すと、麻弥の隠れファンたちはホッ一安心した。
「じゃあ、急ぐから!」
麻弥は早足で歩き出した。途中で男子たちの内緒話が聞こえてくる。
“麻弥ちゃん。ヤッパかわいいよな。オマケに料理上手で家庭的”
“麻弥もだけど沙弥もだろ?”
“そりゃなー。双子だし、見分けつかないし”
“ぶっちゃけ、どっちでも良いから付き合いてぇ”
色々と思うところはあるが、それは彼らもだろう。内緒話にしているだけ節度をわきまえている。聞こえなかったことにして教室をでた。
麻弥の足取りが軽いのは“かわいい”とか“料理上手”とか褒められたからじゃない。このあと、裕貴と会うのが待ち遠しいだけだ。
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