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暑さのせいだろうか? それとも汗をかきすぎたせいだろうか? 頭が上手くまわらない。サウナでのぼせたような感覚だ。
程なくして気づいたのはお尻の下からから伝わってくる振動が変わったこと。先程までは細かい振動だった。細かいデコボコのある……おそらくアスファルトのような場所を走っていたのだろうが、今はもっと滑らかな地面を走っている。
……建物の中に入ったのかな?
そう思った矢先、今度は今までにない衝撃が襲って来た。どうやら階段を降りているらしい。
そしてまた滑らかな地面を走ったあと止まった。急速に訪れた静寂に緊張が走る。キャスターの音がしなくなったということは目的地に着いた可能性が高い。
スーツケースが割れる。冷たい空気と光が差し込む。蓋が全開になると麻弥の体は倒れた。倒れた麻弥の目の前に落ちていたのは切断された人の手。
「んーー! んーー!」
スーツケースから這い出た麻弥の前には巨漢の男……大和田俊之がそこにいた。
ーー大和田くんは人殺し……
芋虫のような状態で大和田を見上げた。蛍光灯が顔を不気味に照らしている。
「窮屈なところに閉じ込めてごめんね。沙弥。今日からここが僕たちがこれから住む家だ」
大和田の言う家はあまりにも不気味なところだ。左右の棚には生首や腕、足といった人体のパーツがところ狭しと並んでいた。
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