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麻弥の頬が叩かれた。全身を拘束されていたため直撃し、華奢な体は派手に床に倒れる。
……痛い痛い痛い痛い痛い痛い……
泣きたくなるくらい痛い。それでも麻弥は歯を食いしばり泣くのを堪える。
「僕はママとは違う! パパとは別の男と……。僕たちをおいて出ていくようなママとは違うんだ!」
「大和田くんの母さんなんて、まるで関係ない。でも……ううん、だから愛が薄っぺらい、愛が理解出来ていない。自分の気持ちを育めず、向き合うこともしない 」
痛くて怖くて泣きたくて……。けどそれを必死に耐えて、思ったことを口にした。裕貴の顔を思い浮かべると“これだけは絶対に譲れない!”と強い気持ちが湧いてくる
ーーこうして話していても、まだ沙弥じゃないと気が付かない。
ーー相手のことを理解しようと、知ろうとしない。
ーーただ、自分の感情をぶつけるだけ。
なんて、薄っぺらい愛なのだろう。愛と呼ぶにもおこがましい。
「違う! 僕の愛は本物だ!」
大和田が沙弥に抱いたのは幻想だ。遠野たちから庇ってくれたから、沙弥がヒーローに見えた。ヒロインだと勘違いした。大和田にあるのは、ただそれだけ。
「違う!」
「違わない! 沙弥が僕の愛を理解出来ないならいい。理解できるように教えやるだけだ!」
大和田は麻弥を包む毛布を掴んだ。 そのまま麻弥を引き摺り、奥の扉を開く。
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