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奥の部屋はさっきの部屋より広い設計だが、大型の荷物が安置されており狭く感じる。
ーー絞首台に吊るされた人
ーーギロチンにかけられた人
ーー串刺しにされたヴァンパイア
ーー今にも金棒を振り下ろしそうな鬼
他にも色々あるが和から洋まで。人間からモンスターまで。不気味さを感じさせるものばかりだ。
大和田はその中でも大型の人形の前に立った。柱には手足を拘束され吊るされた魔女。柱には宗教的な彫刻が施されていて、強いこだわりを感じる。
大和田が柱の横のハンドルを回すと人形を吊りあげていた鎖が緩み、魔女は床に落ちた。大和田はその魔女から手を拘束していた拘束具を外す。
何をされるかは魔法を使わずとも予知できる。大和田はぐるぐる巻にしていた粘着テープと毛布を取るが、麻弥の手をガッシリと握った。
「離して! 離して!」
「大人しくしろ!」
大和田が持ってきた拘束具は木の板に2つの穴が空いており、その中心に鎖をかける金具がついたものだ。手を拘束するための穴の開閉は左右のボルトで行う。両手を同時にしないといけないため、麻弥のように暴れられると1人では困難を極める。
右手は大和田に握られているが左手はそうじゃない。左手で拘束具を押し返す。そんな攻防がいつまでも続くはずがない。麻弥は大和田の振り払った。偶然生まれたチャンス。また捕らえようとする大和田をかわし、扉へ走った。それを慌てて追う大和田は毛布に足を取られて盛大に転ぶ。
この家の見取りはわからないし屋外がどうなっているのかも不明だ。どうすれば逃げ切れるのか……麻弥は大和田が転んだ時間を利用し、未来予知をする。
未来予知をするには集中しないといけない。ドアが目の前にあるが、麻弥の目には未来が見え始めていた。
未来予知は起こる可能性が高いものから順に……それが近い未来であればあるほどその可能性は高くなる。
その結果……‥‥。
ーー逃げられない。逃げちゃダメだ
麻弥は涙で霞んだ目でドアノブを見つめた。この先に待っているのは、起こって欲しくない未来。もちろん、まだ可能性の段階だ。でも起こる可能性が高い。
大和田がよつん這いで追いかけてきていた。毛布とスーツケースが粘着テープで絡まり、解く時間を惜しんだのだろう。大和田は手を伸ばすと麻弥の足首を掴んだ。絶対逃さないという執念が伝わってくる。
「沙弥の居場所はここだ。ここで一緒に暮らすんだろ」
麻弥はうつ伏せに倒され、両手に拘束具が嵌められた。今回スンナリと嵌ったのは、大和田が両手を動かせないように脇で挟んだから。それと麻弥の抵抗する気力が薄れていた。
“探しに来てくれてありがとう。下澤くん……”
どうやって場所を突き止めたか分からないが、この洋館の近くに裕貴がいる。今、外に逃げてしまうと大和田と鉢合わせしてしまう。その先までは予知できなかったが、裕貴に危ないことはさせたくない。そんな未来には絶対にしたくなかった。
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