〇〇が落ちてきた

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 家に帰ってすぐPCの電源ボタンを押した。PCが立ち上がる前に制服を着替えてキッチンへ向かう。ネトゲーにはキンキンに冷えた炭酸飲料が必需品。冷蔵庫から取り出した。すると外から木製の扉を開く音がした。隣の宮内の家の門が開いた音だ。琉璃も同じ電車で帰ってきていたので今、家に着いたところなのだろう。  炭酸飲料を持ってネトゲーにログインする。魔法を使って巨大なモンスターを倒すゲームだ。 「今日は一番乗りか……。みんなが来るまでに、とりあえず回復アイテムでも補充しておくか」    重量級の鎧を装着したアバターを操作してショップへ移動した。耐久力に特化したキャラメイクのため、被弾が多く回復アイテムはいくらあっても足りない。所持限界までカートにアイテムを入れた。  それでも回復役に魔法をかけてもらうことになるのだが……。  このゲームの敵モンスターにはサイズが設定されていて、大きくなるほど強さを増しレア度の高い素材をドロップするようになる。     アニバーサリーイベントを控えている今はとにかくレア度の高い素材が欲しい。なので大型を狩るのだが、ソロプレイでは難易度MAX。マルチが大前提でそのためにギルドメンバーと待ち合わせをしている。  ショップでアイテムを購入しているとメンバーがログインしたことを知らせる通知が鳴った。  買い物を済ませてギルドホームに戻ると着物姿の女性が座っていた。藍色の着物に金髪の長髪がよく似合っていて、まるで水の精霊のような印象を受ける。  マイクのスイッチを入れて話しかけた。 「ラピスラズリさん。こんにちは」 「晴臣さん! こんにちは。早いですね」  ヘッドホンを介して若い女性の声が聞こえてくる。一文字一文字を丁寧に発音するような、少しゆったりとした話し方をする人だ。 「ラピスラズリさん、ゲームのやり過ぎじゃないですか? 毎日いますよね? レベルの上がり方もえげつないですし……」  ギルド『金欠丸』にラピスラズリが入団してまだ半年ちょっと。それもゲーム自体も始めたばかりだという正真正銘の初心者だった。  それが技術もレベルも凄い速度で成長し、追いつかれそうな危機感を抱いている。 「あははは。学校の成績はちょっと落ちちゃてます」 「大丈夫なんですか?」 「まあ。でも、ゲームは思っていた以上に楽しいですから。それに……目標もあるので」  彼女の目標は何なのか? それを聞こうとしたとき別のメンバーが到着した。 「ポンプさんこんにちは」 「こんにちは。今日もお二人一緒なんだね」 「晴臣さんには始めたころから沢山教えてもらいましたから」    始めてラピスラズリと話したのもゲームシステムについて聞かれたのがキッカケだった。それから少しずつ会話を重ねて仲良くなったと思う。
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