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「今夜お祭りがあるから行かないか」
とのこと。なぜ自分が帰ってきていることを知っているのかと尋ねると、昨日お墓参りをしているKを見かけたのだという。そういえば、自分が行った霊園には他に何組もお墓参りをしている人たちがいた。その中にYもいたのだろう。
Kは少し考えた。中学時代、Yとの仲は良くも悪くもなかった。ただ連絡先を知っているというだけで、卒業してからは連絡を取ったこともない。
たいして仲の良くないやつと田舎のお祭りに行ってもな、とも思ったが、どうせ暇なんだし、と考えを変え、誘いに乗ることにした。
出かける支度をしているとKの母親が、
「あら、どこかに行くの?」
と聞いてきたので、
「ああ。昔の友だちと、祭りに」
「良かったじゃない。あんたのことだから、向こうから誘ってくれたんでしょう」
「まあね」
そして、祭りの会場である神社に行った。集合場所に決めた社務所の裏手で待っていると、
「久しぶりだな」
と時間通りにYがやって来た。もう10年以上会っていないが、会ってみるとお互いに分かるものだ、とKは驚いた。Yの顔は当時よりも大人びているし、細身だった体格はがっちりと頼もしくなっている。
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