夏祭り

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「悪いな、急に誘っちゃって」 「いいよ。暇してたんだ」 「他にも誘いたかったんだけど、みんな都合が悪くてさ」 「大人になると、そんなもんだよ」  そんな他愛ない会話を交わしながら、出店を回ったり、浴衣姿の女の子を見て、誰がタイプかなどと笑い合ったりした。会場からちょっと離れたひとけのない駐車場まで歩き、アーチ状の車止めに腰掛けて出店で買った食べ物をつまみながら、懐かしい話などで盛り上がる。そんなことをしていると、あっという間に時間が過ぎた。会場の方から聞こえていた賑わいも薄れ、駐車場に停まっていた車もどんどんなくなっていく。 「そろそろ、帰るか」  Yが残念そうに切り出した。本当に悲しそうな顔をしているのを見て、Kはびっくりした。いい大人の男が、今にも泣き出しそうなのだ。 「おいおい、そんな顔しないでよ。また来年、一緒に回ればいいじゃないか。そうだ、正月に初詣に行ったっていい」 「そうだな、ありがとう」  その言葉も、ちょっと涙で濡れているように聞こえた。気まずくなって、 「さあ、帰ろう」  とYを促す。会場に用意されていたゴミ箱にゴミを捨て、そして別れた。最後までYは、寂しそうな顔をしていた。
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