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「よく作るよねー。私、自分の魔道具だって誰かに見てもらわないと、調子が良いかどうかも分からないのに」
「自分で見れるようになれよ」
えー、と笑みで答えた少女は、クロエより頭一つ分は背が高い。ローブの袖口から杖を出して眺める。
「クロエに見てもらった方が絶対良いって!地面から足が離れる瞬間の安定感とか、自分で手入れするのと、もう全然違うんだよ」
「お前のは雑。飛行系の魔法使うんだから、もっと丁寧にやりなよ」
楽観的で、おおらかだが大雑把なリディヤは、数いる魔法使いの中でも珍しい、飛行系魔法の天才だ。飛行系の魔法は空中の姿勢が崩れないよう維持したり、落ちないように魔力を出し続けたりと、とにかく繊細な魔法のはずだが、
(こいつ、ホントにセンスだけで飛ぶんだよな…)
リディヤは入学した頃からそうだった。まだ魔法の基礎のキの字も習っていない状態で、担当教官の前で軽々と飛んでみせたのだ。あのときの教官は「今年はすごいのが入ってきたなぁ」なんて、苦笑いを浮かべていた。
人は『魔法』、魔力を体外に放出して現実世界に干渉する能力を持って生まれる。誰しも多かれ少なかれ魔力を持っており、また、得意な魔法も一人一人異なる。『魔法適性』と呼ばれ、これは生まれつき耳が良いとか、物心付いたときから足が遅いとかと同じ、先天的な要素が強い。
意識しなくても自分の体を操れるようになるように、感覚で魔法が使えるようになる人も少なからずいる。リディヤもそういうタイプの人間で、体を動かすように魔法を使って空を飛ぶことが得意だった。
「で、こんな朝早くから何してるの」
「早く起きたから軽く走ってきただけだよ?学校外周を3周くらい」
そう言うリディヤは、ローブは脱いで脇に抱えているものの、汗らしい汗はかいていない。
「もうお前兵士になれよ」
「クロエは?これからどうするの?」
「ご飯食べたいけど、とりあえずシャワー…」
「じゃあ一緒に行こうよ」
「ういー」
とりあえずの行き先が決まったところで、二人は寮に足を向ける。
「気を付けてね?“マギ専”の廊下、時々変な魔法かかってて迷わせようとしてくるから」
「おい馬鹿にすんな。入学したの同じタイミングだろ、それくらい知ってる」
「私昨日迷わされちゃってさー。魔法基礎学の教室に行こうとしてるのに、何度試しても食堂に着いちゃってー、結局早お昼しちゃった」
「その後私と食べてなかった?」
「あれ三度目ー」
「…聞いてるだけでお腹苦しくなりそう」
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