第2夜

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第2夜

偶然入り込んだ廃ビルの中で謎の少年ココロと出逢ってから数日が経った。一時はこんな私でも誰かと普通にやり取りが出来ると、今までの人生の中で経験したことの無い嬉しさに包まれていた私ソラだったが、家に帰り、普通の生活をしている家族の中に居るとやはり私は普通じゃないのだと思い知った。 いつもなら日が昇り切る前には家に着き、誰も起きていない家の中を泥棒のように忍び足で部屋まで戻り、また夜まで引きこもる。というような生活をしていたのだけれど、ココロと出逢った日は少し帰るのが遅くなってしまった。そのせいで朝ごはんの支度をしている母と出会してしまったのだ。母は早朝に帰宅した私を見ると、怒ることも、朝の挨拶をすることもしなかった。ただ、出来損ないを見るような視線を一瞬だけこちらに向けると、何も言わず支度に戻っていった。部屋に戻る前に横目に見えた机の上の朝食は三人分だけが並べられていた。 それからというもの、学校に行く訳も無く、家族とのコミュニケーションを試みることもせず、私にとっての日常を自堕落に過ごしていた。日が昇り、世界が動き出す頃に眠り、一日がその形を潜め始めた頃に活動を始める。強いて言うならココロと出逢ったあの日から深夜に居場所を求めて街を彷徨うことはしていなかった。理由なんてものは分からない。ただなんとなく、探しに出たところで、きっと何処にも私の居場所は無いのだろうなと思ってしまっていたからだ。あれほど居場所を探してばかりだったのに諦めてしまったのだろうか。私は、私の本心が分からない。 あれから丁度一週間が経った日の夜。ふと今頃彼は何をしているのだろうと思った。彼は来るも来ないも好きにしろ、と言っていた。ということは彼は毎日あの廃ビルに居るのだろうか?いや、そんな、まさか。あんな衛生に悪そうな廃ビルに好き好んで毎日通うなんてよっぽどの変人か、心に何かしらの悩みを抱えている人か。若しくは、他に行き場の無い人だけ、とまで考えてその行き場の無い人はまさに自分だということに気が付く。あの廃ビルでココロと話すのは、不思議と嫌な気分や居づらさを感じなかった。私が生きていける場所を探していると言った時の彼の顔、今思うとあれは仲間を見つけたといった顔のようにも思えた。 一度考え出すと止まらないのが私という欠陥品で、ココロという少年は今もあの廃ビルに居るのか。何を考えてあそこに辿り着き、何を思ってあそこに足を運ぶのか、確かめたかった。そう思ってからは早かった。いつものように携帯と、普段は持ち歩かない、というよりはまず外に出ないのだけど、財布だけをポケットにしまい、私は一週間ぶりの外出にして、一週間ぶりの深夜の街へと繰り出すのだった。 深夜の繁華街は、そこだけ今でもお昼だと言わんばかりに賑わっていた。この前は雨だったせいもあり、人も少なく気に留めていなかったけれど、普段の繁華街というのはこういうものだ。人の夢と欲望が一応隠されて、隠せていない部分からは目を逸らして、そうやって誤魔化された人の汚い本性がそこら中に散らばっている。元々人混みが得意ではない私は、人混みと、その都合良く隠したフリをされた人の裏側に酔って吐きそうになる。ストライキをする胃を必死に押さえつけ、なんとか目的地へと辿り着く。中に入ると相変わらずカビの匂いと埃っぽさが私を出迎えた。この前と違って、彼は一階には居ないようだ。多分二階の作られた住居スペースに居るのだろう。 階段を上り、二階に到着する。 「こ、こんばんは……」 恐る恐る小さめで、でも中に居るであろう人には聞こえる程度の声で挨拶をする。これで誰も居なかったらどうしよう。というか彼も社交辞令として言っただけで、本当は邪魔とか思ってるんじゃない?来て良かったのかな。返事無いし今日は来てないんじゃないかな。うん、そうに違いない。だったら彼が来る前に急いでここから立ち去ろう。 独り善がりな親切心を繰り広げていると隅の方からガサッと音が聞こえた。 「なんだ、ソラかよ。もう来ないと思ってたから、警察かホームレスでも来たのかと思ってビビったじゃん」 ビニールシートの上に積まれた荷物の影から彼が、ココロが現れた。挨拶より先に文句を言ってくる辺りからココロの人間性が滲み出ている。 「す、すみません……」 「別にいいけど。俺の家って訳じゃないし」 「それもそうですね。謝って損しました」 「なんて手のひら返し。身勝手な奴だな」 「身勝手なのはそっちですよ。来るも来ないも好きにしろって言ったのに、来たら文句言うなんて勝手です」 「普通一週間も来てなかったらもう来ないと思うだろ。況してや、こんな廃ビルの素性もよく知らない男のとこに。何しに来たの?」 「あ、いや、えっと……」 何しに来たの?と聞かれて言葉に詰まる。ココロのことが気になって来た、なんて言ったらまるで告白みたいじゃないか。こんな男に告白するなんて、勘違いでも御免だ。 返事に困っているのが分かったのか、ココロは小さく「ま、何でもいいけど」と言って机の上に置かれた本を読み始めた。私へのあまりの興味の無さに一安心する。 「えっと、隣座ってもいいですか?」 「ん、好きにすれば。こっちの邪魔さえしなきゃ何処に居てもいいよ」 「じゃあ、お言葉に甘えて」 そう言い彼の隣に座る。何か話しかけた方がいいのかな。でも邪魔するなって言われたし。この流れでいきなり何で此処に居るんですか?なんて聞くのは不自然だし失礼過ぎる。あ、でも本格的に読書し始めたらそれこそ聞けなくなっちゃうよね。そうなったらわざわざ此処に足を運んだ意味が無くなっちゃうし。え、どうしよう。どうしたら良いんだろう。 ココロと居るときのソラは、普段と比べると幾分か普通の人に近付いている。だが、その上で見てもソラという少女は普通と呼ぶにはあまりにも異常なほど考えすぎ、気を使ってしまう人間だった。 「……なんで、わざわざ此処に来たの?」 そうしてあれこれ考えていると、意外にもココロの方から口を開いた。しかも偶然にも発せられた問いかけは、ソラがココロに聞きたいことと一致していた。 「その、ココロくんは今日も此処に来てるのかなって思って」 「俺?俺は毎日夜は此処に居るよ。そんなこと確認しに来たの?ソラってやっぱり変わってるね」 「ココロくんも人のこと言えないと思います。こんな廃ビルに毎日来てるなんて、よっぽどの変人ですよ」 「それはまあ、そうかもね」 「ココロくんは、なんで此処に来てるんですか?しかも、毎日夜だけ」 その質問を口にした途端、ココロの動きが少し止まった。返事に困るというよりはどういう風に言えばいいか、言葉を選んでいるという感じで。 「えっと……なんていうか……」 「あ、あの、話したくないならそれ以上聞きません。失礼なこと聞いてごめんなさい。私邪魔ですか?邪魔なら直ぐにでも帰りますから」 「あ、いや、そんなんじゃなくて。というか話しかけたの俺の方だし。邪魔とかじゃないよ。別に得してる訳でもないけど」 だからなんで一々嫌味を挟むんだこの男は。人を不快にさせる才能でもあるんじゃないのか。 「その、強いて言うならソラとは反対の理由、かな」 「私と、反対?」 予期していなかった答えに、頭の中を疑問符が埋め尽くす。その様子が見て取れたのか、ココロは続きを話し始めた。 「ソラはさ、最初来た時に生きていける場所が無いから探してて偶然此処に辿り着いたって言ってたじゃん?あれ聞いた時、俺思ったんだよ。俺と真逆だ、って。ソラみたいな人からしたら嫌味に聞こえるかもしれないけど、俺は何処にでも居れるんだよ。誰とでも仲良く出来るし、どんな話でも盛り上がれるし。何処の集団に入れられても、普通にそこの一員としてやっていけるんだ」 嫌味に関してはそこだけじゃなくて今までの言動の方がよっぽど酷いと思ったが、それは一回スルーすることにした。そこを突っ込んでいては話が進まない気がしたから。 「私は、羨ましいです。自分の居ていい場所も、居れる場所も、何処にもありませんから」 「そうなんだよね。でもさ、何処にでも居れるっていうのは、言い換えれば何処にも居なくていいってことなんだよ。何処に居ても困らないは、逆に此処に居なくても困らないってことになるんだ。ある意味ではソラと反対で、ある意味ではソラと同じなんだよ。自分が居てもいい場所はあるけど、自分が居ないといけない場所は何処にも無い。それが俺だよ」 「それで、この廃ビルに?」 「んー、まあそんな感じ。一人になれる場所が欲しかったんだよね。一人なら、自分が居ないといけないでしょ?だから、そんな理由かな」 「そう、なんですね……」 何を言っていいのか分からず黙り込んでしまう。贅沢だと罵ればいいのか?考えすぎだと慰めればいいのか?いや、慰めの言葉は逆に神経を逆撫でするのはよく知っている。こんな時、普通ならなんて返すのが正解なんだろう。そもそも人とまともに会話することすらほとんど経験が無いのにちゃんとした返事なんて出来る訳が無い。 思考の海に落ちていると、様子を見てられないと思ったのかココロが目の前で掌をパン!と叩いた。急な音と行動にビックリしてしまう。 「この前も言ったけどさ、ソラは周りのこと放って考えすぎ。必要なこと考えてるんだろうけどさ、それされてる側からしたら逆にこっちが困っちゃうよ」 「ご、ごめんなさい……」 正論だ。グウの音も出ない。悪い癖なのは重々承知している。でも、考え無しに言葉を投げて、もしそれで相手を傷付けたら自分も相手も傷付くことになる。それが怖いのだ。だからいつもいつも考えすぎてしまい、結局それで相手を腹立たせる。きっと、ココロも少なからず苛ついてるんだろうなぁ。謝らないといけない。謝ったら許されるのかな。 「だから、次から考え込んでたら、今みたいに手叩いて無理やり我に返すからね。心臓止まっちゃったらごめんね」 「……え?」 「聞こえなかった?考え込んだら無理やり起こすからねって。その都度文句言われたらめんどくさいから、予め言っとこうと思って」 「い、いや、聞こえてないとかじゃなくて。その、怒らないんですか……?」 「怒る?なんで?」 「だって、今まで話してきた人たちは、みんな最終的にめんどくさいって怒って……」 「あぁ、めんどくさいのはめんどくさいよ。当たり前じゃん?」 全く取り繕わない言葉に少し胸が痛くなる。この男は気遣いの前にオブラートを知った方がいい気がする。 「でもさ、別に悪いことじゃなくない?ソラは空回りしてるってだけで、相手のこと考えてるんでしょ?それがちょっと……じゃなくてめちゃくちゃめんどくさい方向に行ってるけど。俺はそんな、相手のために考えたり行動したりとか出来ないからさ。尊敬するよ」 そんなこと、考えたこともなかった。私は、いつも自分勝手なんだと思っていた。有りもしないことや、有っても可能性の低いことを心配して。それで逆に相手を傷付けてしまい、優しさのつもりが裏目に出てしまった、という独り善がりな人間なのだと自分で思っていた。だからこそ、ココロの言った相手のことを思いやってるという言葉はまさしく目から鱗に思えた。 「何?そんな変な目で俺のこと見てきて。顔になんか付いてる?」 「そんなんじゃなくて、その……ココロくんは優しいんですね」 「え、何急に」 「その、今まで話してきた人って、みんなめんどくさいからって離れていくんです。ついさっきまで友達だったのに、いきなり赤の他人みたいに。なのに、ココロくんは赤の他人で、めんどくさいと思ってるにも関わらず、そうやって良い風に受け取ってくれて、それでいて尊敬するなんて、私には勿体ない言葉までかけてくれて、優しいんだなって思いました」 「……俺は、優しくなんてないよ」 「ココロくんがどう思おうと、私が優しいと思ったら、私の中でのココロくんは優しいんです。それでいいじゃないですか」 「……ふーん、じゃ、そういうことにしとく」 「そうしてください」 ココロくんは照れたのか、それとも他に何か思うことがあるのか。それは私には分からなかった。けれど、人に対して自分の正直な気持ちを伝えたのは初めてだった。そして、自分の言ったことを受け入れて貰えたのも同時に初めてだった。 ココロと居ると、今まで一緒に居た自分とはまるで別人の自分が色んなところから顔を出す。いや、別人ではなく、きっとこっちが本当の自分なのかもしれない。気を遣い過ぎることも、その結果思っていることを言えないことも無く、否定するでも改善しようと提案するでも無く、彼は私のことを受け止めてくれるのだ。受け止めて、その上でそれでいいんじゃない?と言い傍に居させてくれる。初めて会ったときに言った「此処を居場所にしたらいい」という言葉を、彼は遂行してくれているのだ。 「今日はいつまで居るの?また朝帰り?」 「あ、いや、この前は少し長居しちゃったので、四時くらいには帰ろうかなと思ってます。」 「ふーん。別に俺の家じゃないし、そんなこと気にしなくてもいいのに」 「気を使ってるとかじゃなくて……その、親が……」 「……そっか。やっぱ色々めんどくさいよね」 「はい……ココロくんは、いつも朝まで此処に居るんですか?」 「いつもって訳じゃないけど……まあほとんどは。放課後家で晩御飯食べて、それからは大体此処で朝まで過ごしてるかな。だから多分ソラがいつ来ても俺は居ると思うよ、夜の間だったら」 「放課後、ですか……」 放課後。その言葉を耳にし、口にしたのはいつぶりだろう。もう一年は学校に行っていないし、そもそも行っていた時期もあまり縁がない生活を送っていた。縁がないというよりかは、そんなことを気にする必要が無いと言った方が正しいけれど。というか放課後は、ってことは…… 「え、ココロくんって学校行ってるんですか?」 「いくらなんでも失礼過ぎない?そりゃ学校くらい行ってるよ。俺だって高校生なんだから。ソラは学校行ってないの?え、もしかして歳上?」 「学校は行ってないですけど……私も一応高校生です。高校二年生のはずです」 「うっそ……マジで同い歳だったんだ。俺も高二だよ。てか、はずってどういうこと?」 「もう長いこと学校行ってないんです。退学届出してはないから、一応在籍はしてると思いますけど……」 「ふーん。不登校だったんだ」 「なんでココロくんは一々傷付ける言い方しかしないんですか!」 「だって事実じゃん」 「それは……そう……ですけど……」 「まあ、別にいいでしょ。学校なんかわざわざ行かなくても。行ったところで、しんどくなるだけのとこになんで律儀に行かないといけないんだって感じ」 「え、そう……なんですか?」 「普通がどうかは知らない、てか多分行かないといけないんだろうけど。俺だって行かなくてもいいなら行かないよあんなとこ。ただ、行かないと親がうるさいし。周りに合わせて行ってるだけ」 「普通……周りに合わせて……ですか……」 「……あー、ごめん。ソラにはそれが難しいんだったね」 「あ、いや、謝らないでください。その、悪いのは私ですから……」 彼の口から出た普通という言葉が重く心にのしかかる。変に見える彼も、普段は私にとって難しい普通の中に身を落としているのだと感じた。そうして、改めて私が普通じゃないんだということを再確認した。 変な気まずさが漂う。ふざけて遊んでいたら誰かが怪我をしてしまった、みたいな気まずさだ。まあ、私はそんな経験したこと無いけど。 ココロも気まずさを感じているようで、どうしようこの空気。と言った感じの表情を浮かべている。私のせいでごめんなさいという気持ちでいっぱいになる。 「……よし、なんか飲もうか。ココアでいい?」 沈黙を破ったのはまたしてもココロだった。気を使ってくれたのは分かるけれど、些か話の流れが急すぎると思う。とは言え、これはもう無理やりにでも流した方がいい空気な気がするし、大人しくココロの発言に流されることにした。 「あ、はい。大丈夫です。ありがとう、ございます。」 「ん、了解。ちょっと待ってて」 そう言い残してココロは飲み物の準備を始める。それにつられてやることの無くなった私は、山積みにされた本をなんとなく眺めることにした。改めて見てみると、本当に様々な本が置かれていることが分かる。これはちょっと前に映画化もされて話題になっていた小説、こっちは今流行りの漫画。他にもファッション誌やスポーツ雑誌、果てには参考書や哲学書、新聞といったものまで置かれている。彼は何を目指しているのだろう。読書が趣味なのかな。適当に、手に取りやすい位置にあった本を開くと、その本は所謂ベタな恋愛小説だった。友達すら居ない私にとって恋愛なんてものは程遠い世界の話で、そもそも誰かを好きになったことなんて今まで無いと思う。本の帯に書かれた王道恋愛小説という言葉を見て、既に幾つも書かれている王道なんかよりも、私みたいに普通じゃない人たちへ向けた小説だってたまには書いてくれればいいのに、と思った。 「はい、お待たせ」 そうこうしている内に用意の終わったココロが話しかけてくる。手に持った本を置いて、作りたてのココアを受け取り、ありがとうございますとお礼を言う。私が置いた本を見てココロは 「なに?ソラ恋愛小説なんて読むの?意外だね」 と言った。仮にも乙女に対して意外は失礼じゃないか。いや、まあ、自分みたいなのが恋愛小説なんて読んでいたら、自分も意外だと思う。 「読みません。ただ、適当に手に取ったらこれだっただけです。というか、意外は失礼です」 「ごめんごめん。そもそも友達すら居ない奴が恋愛なんて興味持つ訳ないよね」 本当に嫌味しか吐かない口だ。その通りだけど。 「うるさいです。そういうココロくんは友達も居ることですし、さぞリア充な学生生活を過ごしているんでしょうね、羨ましいです」 「んー、リア充なのかは分からないけど、一応友達は居るよ。色々と便利だしね」 「へぇー。彼女とかは、居ないんですか?」 「……今は特に居ないよ。そりゃ、昔は居たこともあるけど。というか、居たらこんなとこで女の子と二人で居る訳無いでしょ」 「それもそうですよね。失礼なこと聞いちゃいましたね」 「それって謝ってる?それとも貶してる?」 「さぁ?どっちでしょうね」 まだ知り合って二日目だというのに、すっかりお約束になってしまったお互いの嫌味。いつもなら胸に刺さるような言葉も、ココロとなら言うも言われるも苦じゃなかった。むしろ、この出来立てのココアみたいだと思った。 「にしても、いつもココアばっか作らされるし。そろそろお金取ろうかな、一杯百円くらいで」 「私から頼んでる訳じゃないです。ココロくんが作ってくれるから貰ってるのに、押し売りじゃないですか」 「へー、そんなこと言うんだ。じゃあ次からはもう作らないから」 「それは……ズルイです」 「冗談だよ冗談」 今日も夜が更けていく。相変わらず朝が来るのは嫌だけれど、今日の朝日はじんわりと暖かく、自分を温めてくれるかもしれない。そんな柄にもないことを思いながら、手に持ったココアに口をつける。それはほんのり甘くて、優しい味をしていた。
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