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だって、好きで。ずっと大好きで。
恵以外のだれかが眼中に入ることは、一度たりともなかった。
「あ~あぁ……小春って、すごいなぁ」
「なにが?」
天をあおぎ、本当に感心したというふうに深いため息をついた恵。
そして、視線を戻して、首を捻る私の頬に手を当て、ゆっくり近づいてくる。
「小春はやっぱり……究極だね」
「きゅ?……んっ」
恵が囁いた言葉を聞き返そうと口を開きかければ、刹那に重なる唇。不意打ちに面喰い、目を見開いたまま身体が硬直した。
ゆっくりと恵の顔が離れていくと、唇だけに感触が残っていて、キスをされたことを自覚し、顔がボワッと一気に熱くなった。
「だ、だ、だれかに見られたらどうするの!?」
「……見られないよ」
「いやいやいや!」
「もう一回しとく?」
「ええっ? いや、あの、そうだ、ピアノ! ともかく練習しよ! 練習!」
「……ケチ」
「だ、だって……」
幼馴染から一歩踏み出して、まだ一日目。まだまだ慣れない、新たな二人の関係。
「なんだか、恥ずかしくって……」
真っ赤な顔を手で覆い隠し、指の隙間から上目づかいで恵の様子をうかがう。
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