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四月一日の恒例行事、三人だけのバースデーパーティー。いつからか恵が四月二日に自分の誕生日を祝うのを頑なに嫌がって、恵の誕生日も四月一日に祝うようになった。その理由はいまだに謎だ。
「なあ、入学式いつだったっけ?」
「四月八日だろ」
慎の質問に恵が呆れながら答える。
「そっか! また小春と一緒だな」
「そうだな。よろしく、小春」
「……うん」
四月八日、二人は私の通う高校へと入学する。また三人一緒。だけど、三人一緒ではない。いつものジレンマが顔を出し、じくじくと胸がうずく。
ちっちゃい頃はよかったなぁ……
リビングのはしっこで、カバーがかかったままのアップライトピアノ。それをぼんやりと眺めながら、なんにも考えずに三人で遊んでいた日々を思い返す。
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