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『倉橋 小春 様
あなたのことをずっと見ていました。
だから、あなたの好きな人も知っています。
これからもあなたをずっと見ています。』
4月1日、私宛にきた一通の手紙。真っ白な封筒に印字された無機質な文字。差出人なし。消印なし。
なにこれ? どういう意味?
第一印象は、この言葉につきた。私は、その摩訶不思議な手紙を見つめて、眉間にしわを寄せ、首をかしげる。
「お! なんだ、それ!」
「ちょっ! 慎!」
だれもいないと思って油断をしていた私は、ヒョイと手元から手紙をとりあげられて焦る。ピョンピョン飛びはねて、なんとかとり戻そうとするけれど、相手との身長差で無駄なあがきだった。相手は、一五五㎝の私より二十センチは高い。
「ん? なに、なに? ……うーん? これ、ラブレター……なのかぁ?」
「慎、返して! 返してってば!」
本人の了承もなく文面を読み、私と同じように首をひねっている慎。なんとかとり戻そうとピョンピョンしている私の横から、すっと手がのびてきた。
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