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「……仕方ないな。わかったよ。ま、少しずつだな」
「少しずつ?」
「そ。幼馴染から恋人になる練習」
幼馴染から恋人へ。くすぐったい響きに、嬉しさと同時に戸惑いも。
今までずっと願ってきたのに、いざそうなると、今までとは違う二人の関係に怖気づきそうで。
「……そんな練習までしないといけないの?」
「練習せずに、もっと恋人らしいことしてもいいけど?」
「な、な、なにをっ」
暗に含まれる言葉を想像して、あたふたと動揺する。
すると、恵がふんわりと優しく私を抱きしめる。宝物を抱きしめるように。
「だって、ようやく小春が俺だけの小春になったんだから」
耳元で甘い囁き。胸をきゅんとさせる言葉に、私の心は呆気なく陥落。
「わかった……練習、がんばる」
「ブッ! がんばってくれるんだ?」
「うっ……なんとか」
吹き出してクスクス笑う恵に、頬をふくらませ視線をそらす。
だって、あんな言葉をいわれたら、嫌だとはいえないじゃない。
「よし! じゃあ、もう一回練習を……」
「はいはい。ピアノの練習ね」
私は咄嗟に顔の前に腕をクロスさせて防御する。
「……なんで?」
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