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「慎、人にきた手紙を勝手に読むなんてデリカシーがないだろ。ほら、小春」
「あ、ありがとう……恵」
慎と同じ身長である恵が、彼の手からたやすく手紙をとり返し、私へと渡してくれた。ホッとすると同時に、戻ってきた手紙の不気味さも戻ってくる。
朝、新聞をとりにいった時には、すでに郵便受けに入っていた手紙。差出人も文面も謎だらけで、ちょっと気味が悪い。
これって、エイプリルフールのいたずら?
「あら、恵ちゃん、慎ちゃん、いらっしゃい」
ひょっこりとリビングに顔を出し、二人に挨拶したのは能天気な私の母、月絵。
「お邪魔してます。月ちゃん」
恵と慎、兄弟一緒に挨拶を返す。
四〇代のオバサンをちゃんづけ呼びするなんて変だけど、彼らは小さい頃からそれが当たり前のこと。ちなみに私も彼らの母を「理香子ちゃん」と呼んでいる。なぜなら、母親同士がそう呼び合っているからだ。
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