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母親二人は中学時代からの親友で、そして、その結婚相手(つまり父達)も部署は全く違うのだけど、同じ職場のウマの合う同期同士という奇遇。そんな気心の知れた倉橋家と古賀家は、ご近所問題に悩まずにすむよう、隣同士で家まで建てた。
というわけで、当たり前のようにお互いの家をいき来する仲で、倉橋家の一人娘である私と、古賀家のご子息である古賀恵太郎、慎太郎は、兄弟同然で育った。
二人とも顔がそっくりで、背丈も同じ。違うのは髪型くらい。恵は長めの前髪を自然に横に流していて、慎はスポーツマンらしくちょっと短めで前髪をあげて、おでこを出している。
「あれ? 小春、ケーキとってきた?」
「自分でとりにいくなんて、そんなのわびしいもん……」
私は口をとがらせ、母に抗議する。そして、ちらりと恵を見た。すると、ふっと恵は小さく笑って、くせっ毛でゆるいウェーブかかった私のボブ頭に、ポンと手を置いた。
「月ちゃん、俺がとってきたから」
「あら、ありがと。恵ちゃん、悪いわねぇ」
恵が持っていたケーキ屋の紙袋を持ち上げると、母は手を合わせてお礼をいった。
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