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「でも、恵ちゃんの分も兼ねているから、それもわびしいんじゃない?」
「アハハ…そんなこと気にしないよ。俺は」
「相変わらず優しいわねぇ。恵ちゃんは」
お母さんは、紙袋を受けとりながら恵を気づかった。そして、ダイニングテーブルの真ん中にトンと紙袋を置いた。
恵は優しい。いつも私の味方。
私は、じっくり考えてからようやく行動に移すタイプで、周りの人からするとおっとりしているらしい。そのため、小さい頃からちょっと人より遅れをとってしまうことが多かった。
そんなドンくさい私をいつも恵がかばってくれていた。からかわれたりすると(それが慎だったりするけれど)、すぐさま恵が盾となってくれた。私の中で、恵はだれよりも信頼できる味方だ。小さな頃から、それはゆるがない。
「ちょっ! 俺のも兼ねているんだから、俺も同じじゃね?」
「厚かましいなぁ。ケーキをとってきたのは恵でしょ。慎はなにもしてないじゃん」
「小春だって、なににもしてないだろ!」
「まあ、まあ……」
いい合いを始める私と慎を恵がなだめる。これがいつものお決まりだ。
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