メロン、蒸発の行方

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メロン、蒸発の行方

ある日の日曜日、どうしたことか、わざわざ電車を乗り継いで、裕一が私と裕美を連れて公園へ連れて行ってくれた。 飛鳥山公園。 小さな頃、美代子に何度か連れて行って貰った記憶がある。 暫く行っていなかった公園に行けると、私は飛び上がるほど嬉しかった。 公園の近くにはおもちゃ屋があり、そこで私と裕美はそれぞれおもちゃを買って貰った。 これもまた、裕一がこんな事をしてくれたのは初めてだった。 紙箱の小屋に半身だけ入っている犬のぬいぐるみ。 スイッチを入れるとぴっぴっぴっと鳴くのが可愛い。 裕一は近くの八百屋でメロンを買っていた。 何でメロンを買うんだろう、と不思議に思ったが、私と裕美は手に持ったおもちゃとこれから行く公園の事が頭の大半を占めていて、大して気にも留めなかった。 暫く公園で遊んでな、と言われた。 裕一は、この近くにちょっと寄っていきたいところがある、と言う。 その日の夕飯時。 裕一は駅前に飲みに出掛けていた。 いつもの事だ。 飛鳥山公園に連れて行って貰った事、裕一はメロンを持って少しいなくなっていた事、そして買って貰ったおもちゃを見せた。 美代子が「どこへ行ってきたの?」 「お父さんはどうしてたの?」 など聞いてきたので、バカ正直に答えたのだが、美代子は訝しげに思っていたようだ。 言ったらいけなかったのかな・・・ 子供なからそんな空気を感じ取ってしまった。 この時にはまだ分からなかったが、私や裕美が成人してから、メロンを持っていったのは女の家だったと美代子は暴露した。 「女の家に行ったのよ。季節外れの高いメロンなんか買っちゃって。」 美代子は裕一を嘲笑うように言い放ち、それ以降、如何に裕一がクズ男なのか語られる事になった。
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