選択

2/4
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
20日、午後に子供たちを連れて見舞いへ行った。 HCUは12歳以下の入室ができない。 9歳の娘は廊下で看護師が相手をしていてくれた。 娘はおじいちゃん子だ。 「ねぇじぃじ〜」 よく言っていた。 その娘、裕一にとっては孫を、会わせてあげられないのが辛い。 裕一は相変わらず苦しそうだ。 発熱が続いている。 血中酸素濃度も低下、人工呼吸器で管理されて数値を維持している状態だ。 この状態から回復する事が果たしてできるのだろうか。 美代子が看護師と少し話している間、私は先にHCUから出た。 廊下で待つ娘がさびしくて泣いているんじゃないかと心配になったのだ。 意に反し、娘は一緒にいてくれた看護師と仲良く待合の長椅子に座り、談笑をしていた。 私は看護師に見てくれていたお礼を言い、裕一の病状は厳しい状態なのかと聞いた。 何か手立てがあるものなのか。 今後の選択肢として、気管挿管という可能性、その際には今よりも強い鎮痛、鎮静剤の投与が必要になる事、感染症にかかるリスクが高くなるなど教えて貰った。 家に帰り、気管挿管に関する記事や学術書をNETで片っ端から調べて、病状の深刻さと気管挿管しても予後が難しいことを理解した。 多分、もう駄目なんだろうと思う。 HCUとは高度治療室のことだ。 ICU(集中治療室)から脱した患者が一般病棟に移るまでの間治療を行うものだと理解していたが、実際の所行っている治療はICUとほぼ変わらなかった。 裕一の姿を見ると、本当に回復するんだろうか、、、というどんよりとした悪い予感しかなかった。 この予感は確かなんだろう。 恐らく死ぬんだろう。 覚悟をした。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!