疎ましい存在

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遠足の間も今朝の事が頭から離れなかった。 靴下から微かに灯油の臭いが鼻をかすめて、嫌でも今朝のやり取りに引き戻される。 どこへ遠足へ行ったのか、未だに思い出せない。 そして、、、楽しみにしていたはずのお弁当の時間。 レジャーシートを広げ、皆で座る。 お弁当の蓋を開けたら、ぷんと灯油の匂いがした。 一口食べたら灯油の味がした。 頑張って数口、口に運んだが異様な味と臭い。 とてもじゃないが食べられる状態のものではなかった。 近くにクラスメートが一緒に座っているので、食べないのをおかしく思われてしまう。 この臭いを知られてしまう。 どうしよう、凄く恥ずかしい。 悲しい。 涙が溢れそうになった。 クラスメートに悟られたくなくて、トイレに行くフリをして弁当箱をこっそり持ち、ゴミ箱を探し歩いた。 みんなから少し離れた所にゴミ箱を見つけ、弁当の中身をすべて捨てた。 帰宅後の夕刻、美代子に「お弁当、灯油の味がして食べられなかった」と伝えると、 美代子は「そう、、、」と悲しそうな顔で言った。
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