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「明日行けば夏休みだな、“キリヤ”は忙しいんだっけ」
『そうそう、休みはいいんだけど夏期講習とかあって逆に忙しいんだよな。“カナト”は自由でいいよなー』
「はは。まあ、無理せずゲームできる時には声かけてくれ」
『おう、じゃあまたな』
タブレット端末を使った通話が終わった。会ったことのないオンラインゲーム内だけの友達で、本名も知らないが“キリヤ”というのがゲーム内の名前なので通話でもそう呼んでいる。
SNS上でフレンド登録をしており本人と思われる画像もあることから、同学年の同じ男子高校生であるというのは間違いなさそうだが、必要以上に詮索もしたことはないので、通話をしながらオンラインゲームを楽しむ仲間という関係性を1年以上続けている。
ちなみにカナトはゲーム名でもあり本名でもあるのだが、これが本名であるとはキリヤには言ったことはなかった。
タブレット端末を充電器に差し、部屋の電気を消すとカナトは数分で寝付いてしまった。
いつも通りの時間に起きて、いつもと同じ準備をし、いつもと同じ通学路で登校する。
歩いていると、いつもと同じ通学路である住宅街に見たことのない制服を着た女子校生が佇んでいる姿が見えた。
透き通るような白い肌に真っ黒なロングヘア、神秘的とも言える魅力がありアイドルグループにいたとしても、その中でも人気ランキングはきっと上位に位置するだろう。
特に待ち合わせするような場所でもないが、彼氏との合流地点が丁度ここなんだろう、などと思いながら通り過ぎようとした。
「ねぇ、もしかして私のこと見えてた?」
とその時、佇んでいた女子校生が思いもよらぬセリフで話しかけてきた。
横目でしか見れなかったが声をかけられたことで 当然真正面から見るかたちになる。
正面から見ると尚更可愛い。
「もちろん見えてますけど……どういうことですか?」
「おぉー!やっと私のことが見える人と出会えました!」
そう言いとても嬉しそうな表情をうかべた。
「えっと、簡単に言うと私はこの世のものではないというか、死んでます」
真面目な顔でそう言う彼女は真剣そのものであった。肌はたしかに白いが血色は良いし、足元も違和感はなく地面にしっかりと立っており普通に影もある。到底この世のものではないという感じではなかった。
「疑ってますね?証拠をお見せします」
そう言うと周りをきょろきょろと見回した。
男子高校生二人がこちら側に歩いてくるのが見えると、彼女はその方向へと歩きだした。と、男子高校にいきなり手を振り「おーい」と呼びかけた。
男子高校生達は明らかに視界に入る距離にも関わらず、そこに誰もいないかのように話しながら通り過ぎた。すると彼女は通り過ぎた男子高校生の前方へ先回りし足を前に出すと、それに引っ掛かり男子高校生は転倒した。
「いってー、何かにつまづいた……ような気がしたけど何もないな……」
「おいおい、大丈夫かよ」
男子高校生達はまた普通に歩きだした。
「これでわかった?あなたにしか見えてないの」
「本当だったんだ……」
「で、話は戻してなんで死んだのにこんなところにいるのかと言うと、少しやり残したことがあってね。これも何かの縁だと思って協力してくれませんか!?」
真っ直ぐな視線が向けられた。
幽霊の頼みを聞くというのは少し怖い部分もあるが、美少女からの頼みには代わりないので断ることはできなかった。
「まあ、俺にできることなら」
「ほんと!?ありがとう!……あっ」
ふと何かを思い出したような仕草をみせた。
「このままだとすっごい独り言の激しいやばいやつに見られちゃうよね。ごめんね。いま私のこと周りの人からも見えるようにするね」
そう言うと、目を閉じ何か呪文のようなものを唱え始めた。
「これで私のことは周りからも認識できるようになってるから普通にして大丈夫だよ」
呪文のようなものが終わるとゆっくりと目を開け、満面の笑顔で言った。
「さて、これから学校だと思うので一旦解散しましょう!終わる頃にまた迎えに行きますね。あ、一応生前の名前は麻里奈って言います!」
麻里奈は軽くお辞儀をしその場を立ち去った。
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