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合縁奇縁
眠たい目を擦り、僕は目覚ましを止めた。
時刻は6時32分。
そろそろ起きて学校へ行く準備をしなくてはならない。
ベッドから体を起こし、カーテンを開けるとまばゆいばかりの朝日が部屋へ差し込んできた。
まだ早朝というのに元気に蝉が鳴いている。
何気なく携帯を見るとLINEが1通きていた。
クラスで目立たない存在の、正確には目立てない存在の僕は友人が極めて少なくLINEでやりとりすることはほとんどない。
画面を開くと(菊田 小百合)とあった。
菊田さんは容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能でありクラスでも中心的な存在だ。
我が校へ入学すると必ず一度は恋をすると言われるほどである。
当然、彼氏へ立候補する男子はあとを経たない。
だが、その念願の彼氏になれたものはいないと聞く。
一部では、「男に興味がない」や「他校の男子と付き合ってる」などと噂されていた。
もちろんそんなアイドル的菊田さんと陰キャラ代表的存在の僕が連絡先を交換しているはずもない。
おそらく連絡網の役割をしているクラスのグループLINEから僕を見つけたのだろう。
そんな菊田さんが僕に何の用というのだ。
送信された時刻は夜中の1:35。
『いきなりごめんね』から始まる文章を読み、僕は驚愕した。
『いきなりごめんね
同じクラスの菊田です
実は前からいいなと思ってたけど、なかなか言い出せなくて
ホントは直接言いたかったんだけど、どうしても言えなかったからLINEするね
ずっと好きでした
良ければ付き合ってください
……お返事待ってます』
血圧が一気に上がり、今にも血液が逆流してきそうだ。
動悸が激しくなり、うまく思考がまとまらない。
窓の外では蝉の合唱が一際大きくなった。
これは、イタズラだろうか。
僕を騙して反応を面白がるつもりなのか。
それとも送る相手を間違えたか。
まさか、本当に……
僕はLINEを返信できず、モヤモヤしたまま登校することとなった。
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