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僕の席は窓際の一番後ろ。
菊田さんは僕の一列右の2つ前、僕から斜め前方にいる。
特別変わった様子もない。
午前の授業が終わった。
ジリジリと照らす真夏の紫外線を受けながら、菊田さんの様子を窺っていたわけだが、授業は真面目に受け、休み時間は仲の良い女子達に囲まれていた。
昼休みに入り、僕はトイレへ行った。
用を済ませトイレから出てくると、ちょうど菊田さんも女子トイレから出てきた。
珍しく取り巻きもいない。
僕は勇気を出して話しかけた。
「菊田さん」
少し上ずった声で呼び止めた僕に、菊田さんは少し驚いた顔をしてこちらを向いた。
透き通るような白い肌、吸い込まれそうな黒い瞳。
その何もかもが美しく、見とれてしまう。
「どうしたの、佐野くん」
「昨日のLINEのことなんだけど」
少し慌てたように菊田さんが割って入った。
「あっ、あれはね」
と言いかけたところでトイレからいつもの女子達が出てきた。
「何々どうしたの?」
「佐野となに話してるの?」
と取り巻きが菊田さんに聞いている。
「ごめん、なんでもない」
僕はそう言い残し、背を向け歩き出した。
背中の後ろでは
「小百合、佐野とLINEしてるの?」
「してないよ。人違いじゃない。」
などと言ってるのが聞こえた。
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