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急転直下
やはり人を間違えてLINEしたのだろうか。
モヤモヤしたまま昼休みを過ごすと頭が痛くなり、保健室で休むことにした。
僕は頭痛持ちでよく保健室で休んでいる。
「また頭痛?ベッド空いてるから寝てなさい」
保健室の国枝先生はいつものように言った。
ベッドで休んでいるといつの間にか寝てしまい、6時間目が始まるチャイムで目を覚ました。
今から行っても間に合わないので、6時間目もこのままここにいることにした。
「佐野くん、また痛くなったらこれ飲んで」
帰り際、国枝先生が頭痛薬をくれた。
「眠くなるから気をつけてね」と言い残し先生は戻っていった。
頭痛はすっかり治まっていたが、先生のくれた頭痛薬2錠を水筒のお茶で流し込む。
帰りの電車に揺られながら、夕焼けに染まる町並みを見ていると薬が効いてるのだろうか、ウトウトし始めいつの間にかまた眠っていた。
気づいたときには、ガラガラだったはずの車内は帰宅ラッシュの乗客であふれ、窓の外はネオンが輝く暗闇の世界へと変化していた。
どのくらい眠っていたのだろう。
幸いだったのは乗っていたのが環状線だったことだ。
同じところをグルグル回っていたようだ。
最寄り駅で降り、改札を通る。
財布に違和感を感じた。
薄い気がする。
中身を確認すると札が無くなっていた。
総額2万3千円。
寝ている間に盗まれたのだろう。
今日はなんてツイて無い日なんだ。
煌々と輝く満月が誰もいない夜道を照らす。
僕は鬱憤を晴らそう叫ぼうとした。
だが、周囲の目が気になり、やめておいた。
周りには誰もいないはずなのに。
僕はなんて小心者なんだ。
ため息をつき帰路についた。
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