一章◆お見合い

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家に帰ってもそのモヤモヤは一向に晴れない。それどころかどんどん膨らむばかりだ。 “杏奈さんが魅力的すぎて他の男性に見られるのが嫌”とか独占欲を出してくると思いきや、その後は控えめな発言の連発で、杏奈は思い出してイライラとする。 基本的なお見合いの流れというものはよくわからない。 (だけど、何度か合うなら結婚を前提にお付き合いしてくださいとか言われたりするものじゃないの?) それが一般的なお見合いの流れと言えよう。 ましてやもう3回も会っているのだから。 イライラが募って、勢いにまかせて愛美に電話を掛ける。 杏奈の愚痴を一通り聞き終わった愛美は、ニヤニヤとした顔が思い浮かぶ程のいやらしい声で告げた。 「杏奈、何だかんだ言って好きになってない?」 「は?まさか?」 「次誘われたらまた行くんでしょ?」 「断るわよ。」 「またまたー。ふふふ。杏奈がヘタレ好きとはねー、意外だわ。」 杏奈の意見など無視して好きだと決めつけてくる愛美に、杏奈は叫んだ。 「だから、好きじゃないってば!」 そうだ、断ろうとしていたんだ。 だったら早く断らなくては。 この勢いのまま、杏奈は母経由で今回のお見合いのお断りの旨を伝えてもらった。 今言わないとずるずると流されてしまいそうだったからだ。 母からは「もったいないわねぇ」と言われたが、そんなこと知ったことではない。 お見合い自体はちゃんと受けたのだから文句はないはずだ。 なのに、少し寂しいだなんて感じてしまうのはやはり気の迷いか、それともただ疲れているだけなのだろうか。
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