三章◆微睡み

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「杏奈さんが寝てしまって家がわからなかったので、僕の家に連れてきてしまいました。」 そういえば広人に背負われて、家に送ってもらおうとしていた記憶が微かによみがえる。 だとすると、その背中で杏奈は寝てしまったということになる。 「…それって確実に私が悪いじゃないですか。何で広人さんが謝るんですか。はー。しかも私ベッドまで占領して、広人さんはどうしたんですか?」 「僕は大丈夫ですよ。」 「もう、そうじゃなくてっ!」 何でもないように言う広人に思わず強く叫ぶと、頭に鈍痛が走って杏奈はこめかみを押さえた。 「もしかして頭痛ですか?今薬を出しますね。」 杏奈の仕草を敏感に感じ取って、広人は棚から薬を出しコップに水を入れてテーブルの上に置いた。 そして杏奈をそこへ誘導する。 「はい、ここに座って。」 無理やりダイニングチェアに座らされ薬と水を差し出されるので、大人しく飲むのが正解だ。 ひといきに飲むと、杏奈は深いため息と共にテーブルに突っ伏した。 頭は痛いし酒臭いし、昨日に引き続きみっともない姿を見られるしで気分は最悪だ。 「…はー、最悪。」 「もう少し寝ていた方がいいんじゃないですか?」 ぼそりと呟いた声をしっかり受け取り、広人は甲斐甲斐しくも心配する。 どこまでも優しい広人に、杏奈はますますイライラして頭を押さえた。 いろいろ思うところはある。 だが、今の杏奈にゆっくりと考える余裕はなかった。 頭は痛いし酒臭いし、とにかくこの状況をリセットしたい。 突っ伏していたテーブルからがばっと顔を上げると、キッと広人を睨んで言う。 「広人さん、シャワー借りていいですか?あと着替えも!」 「え?」 「もう、お酒臭くて嫌なの!」
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