三章◆微睡み

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自分の未熟さに自己嫌悪に陥り、杏奈は滝行のように頭からシャワーをかぶった。 温かいお湯に少しばかり落ち着きを取り戻すと、ようやく思考も回復してくる。 (はー。恋人でもなんでもない人の家で無防備にもシャワーを借りて、私大丈夫かしら?いや、だって広人さん絶対何もしないし。大丈夫よね。) そう思いつつ、それくらい広人のことを信用している自分にも驚く。 シャワーを貸してほしいと頼んだときも、驚きつつも親切に浴槽の使い方の説明までしてくれたし、タオルも着替えもしっかり置いていってくれた広人。 「はー、迷惑かけすぎ。」 本日何度目かわからないため息をついてから、用意してもらったジャージへ着替えた。 袖が余ってしまうだぼだぼのジャージは、広人が男性だということを改めて思い知らされる。 杏奈はリビングの扉を開けると、広人を呼ぶ。 「広人さーん、迷惑かけついでに洗濯機も借りていいですか?」 「構いませんよ。」 杏奈の呼び掛けにすぐさま反応し、広人は杏奈のそばへ寄ると、おもむろに袖を掴んだ。 突然のことに杏奈の胸はドキリと音を立てる。 「やっぱり大きいですよね。すみません。」 ジャージの袖を杏奈の腕の長さに合わせて綺麗に折り曲げながら広人が言う。 「だから、何で広人さんが謝るんですか。次謝ったら怒りますよ。」 「ははっ、もう怒ってるじゃないですか。」 杏奈の威嚇にも広人は楽しそうに答えて笑う。 その笑顔に感化されたのか、杏奈のイライラはどこかへ行ってしまったかのようにいつの間にかすうっと消え失せていた。
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