四章◆変化

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考え事をしていたら、いつの間にかトレーいっぱいのパンを注文していた。 琴葉は会計をしながら丁寧にパンを紙袋に詰めていく。 その作業をぼんやり見つめながら、杏奈は意を決したように拳を握りしめた。 「あの、前は酷いこと言ってごめんなさい。」 呟くように言う杏奈の言葉に、琴葉は手を止めて少し不思議そうな顔をする。 そして、あっと思い出す。 「わー、そんなこともうとっくに忘れていました。ふふふ。杏奈さんってやっぱりいい人ですね。」 ニコニコと笑う琴葉に、今度は杏奈が不思議そうな顔をする。 「雄くんが、杏奈はいいヤツだからって言ってましたよ。」 「雄大が?」 琴葉の口から出てきた“雄くん”というワードに、杏奈は図らずもドキリとしてしまう。 まさか、雄大が杏奈のことをフォローしてくれていたとは思わなかったのだ。 嬉しいようなくすぐったいような、そんな気持ちだ。 「今日は来てくださってありがとうございました。」 琴葉はお金を受け取り、代わりに丁寧にパンを詰めた紙袋を杏奈に手渡す。 杏奈はそれを受け取ると、琴葉を見た。 今日、初めて目があった瞬間だった。 「また、来るわね。」 「はい!ぜひ!」 満面の笑顔で見送られ、杏奈はminamiを後にした。 別にモヤモヤしていたわけではない。 過去にとらわれていたわけではない。 だけど、とても清々しい気持ちになった。
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