第一章 リセットされた世界

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 ジリジリと肌が焦げてしまいそうな炎天下、夏の陽ざしがTシャツから伸びた腕をジリジリと灼け焦がす。  ご飯も食べずに向かったのはお隣の家だ。  蓮城(レンジョウ)という表札のかかる門扉、その先には古いヨーロッパ形式を思わせる厳かな洋館がたたずんでいる。  小さい頃は、時々遊びに来ていたけれど、になった現在(いま)、もう十五年ほど、この家に立ち入ったことはなかった。  碧がいるかどうかはわからないけれど、インターホンを鳴らした。  急かすように一回、二回、三回と連打を早めていく。  出ろ! 出てよ、頼むから!!  インターホンからの返事はなく、もう一度押そうかと思ったその時、蓮城家のドアがギイっと開く音にハッとして顔を上げた。 「おはよう、紅」  玄関から出てきた彼の姿にショックを受けたのは、Tシャツ、デニム姿の、碧の身長が、私と同じくらいだったからだ。 「ねえ、紅。 俺に聞きたいことが、あるんでしょ? 上がれば? 今誰もいないし」  無表情のままの碧を睨みつけ、招かれたままに上がり込む。  昔来た時と変わらない、長い廊下のドアの先へと通される。  大きなベランダから光が降り注ぐ明るいリビング、エアコンが効きすぎて少し寒い。   「座って、お茶でも淹れるよ、温かい方がいいんじゃない? 鳥肌立ってる」  私の二の腕の鳥肌を見てクスリと笑った碧に。 「そんなことより、」 「わかってる、長くなるからさ。きっと、喉が渇く」  冷静沈着な碧は、ずっとこんな感じだった。  いつだって、今だって。  私が何を言いたいか、聞きたいか、全部わかった上で、落ち着けとばかりに温かいお茶を私の前に置いた。
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