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ジリジリと肌が焦げてしまいそうな炎天下、夏の陽ざしがTシャツから伸びた腕をジリジリと灼け焦がす。
ご飯も食べずに向かったのはお隣の家だ。
蓮城という表札のかかる門扉、その先には古いヨーロッパ形式を思わせる厳かな洋館がたたずんでいる。
小さい頃は、時々遊びに来ていたけれど、二十五歳になった現在、もう十五年ほど、この家に立ち入ったことはなかった。
碧がいるかどうかはわからないけれど、インターホンを鳴らした。
急かすように一回、二回、三回と連打を早めていく。
出ろ! 出てよ、頼むから!!
インターホンからの返事はなく、もう一度押そうかと思ったその時、蓮城家のドアがギイっと開く音にハッとして顔を上げた。
「おはよう、紅」
玄関から出てきた彼の姿にショックを受けたのは、Tシャツ、デニム姿の、碧の身長が、私と同じくらいだったからだ。
「ねえ、紅。 俺に聞きたいことが、あるんでしょ? 上がれば? 今誰もいないし」
無表情のままの碧を睨みつけ、招かれたままに上がり込む。
昔来た時と変わらない、長い廊下のドアの先へと通される。
大きなベランダから光が降り注ぐ明るいリビング、エアコンが効きすぎて少し寒い。
「座って、お茶でも淹れるよ、温かい方がいいんじゃない? 鳥肌立ってる」
私の二の腕の鳥肌を見てクスリと笑った碧に。
「そんなことより、」
「わかってる、長くなるからさ。きっと、喉が渇く」
冷静沈着な碧は、ずっとこんな感じだった。
いつだって、今だって。
私が何を言いたいか、聞きたいか、全部わかった上で、落ち着けとばかりに温かいお茶を私の前に置いた。
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