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プロローグ
なぜ、こんなことになった?
私が一体何をしたというの?
「主文、被告人 一ノ瀬 紅、現在より人生10年のリセット、及び時間操作能力の一切の禁止を命ずる」
このバカみたいな主文に、鼻から息が漏れて笑みすら零れた。
目の前で起きている出来事を現実として認めるなんて、どうかしているだろう。
けれど、私の弁護人としてついたこの無能の碧のことだけは、今ここにいる誰よりも信用するしかなかった。
碧だけは、私の現実だったから、縋るように視線を向けた。
なのに無情にも、彼は酷く悲しい色を湛えた瞳で、私を見据え。
呆れているとも哀れんでいるともとれる声色で告げた。
「何度も忠告はしてきたつもりだ、自業自得だよ、紅」
忠告!? いつ、誰が何を忠告したっていうの?!
もしも、碧から私にだというならば、さっぱりわからない。
だって、私はそんなに悪いことをしてきたつもりはない!
怒りに震える私を、碧は蔑んでいるのか、ため息をついて何も異論などないかのように机上の書類を片付けだす。
待って、ちょっと待ってよ!!
「異議、あり!!」
何も言わない弁護人に代わって、震える拳を握りしめたまま自分自身を弁護するつもりで異議を唱えた。
「被告人の異議は認めません、以上を持って判決を終了いたします」
感情を持たない無機質な声と黄金のガヴェルが鳴り響き、法廷内に終了を告げた。
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